シアカーネルのサステナブル調達
マテリアリティ
サステナブル調達
方針
不二製油グループは、シアカーネルサプライチェーンの持続可能な開発方針として、2021年7月に「責任あるシアカーネル調達方針」を策定し、中長期目標とKPIを設定しました。持続可能な未来のために、同方針のもと、以下3つのコミットメントを着実に実行していきます。
- シアの木が生息する地域内の緑地保全:シアの木および固有種の苗木を毎年6,000本植樹
- 農村の発展と環境へ配慮した取り組みの推進:シアカーネルに関わる女性のエンパワーメントや協同組合の生産能力向上
- 地域における価値創造:オペレーションスキルや品質・安全に関する教育を含む雇用創出および地域内での分別による製品の高付加価値化
ガバナンス
不二製油グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長兼CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1を設置しています。サステナビリティ委員会では、ESGマテリアリティ重点項目※2として「シアカーネルのサステナブル調達」を特定し、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、上席執行役員 油脂事業本部長管掌のもと、フジ オイル ガーナが本社事業部門と連携して取り組みを推進しています。
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※1 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>ガバナンス
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#governance
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※2 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>指標と目標
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#index
戦略GRI:2-6
シアの木は、西アフリカのサハラ砂漠以南のサヘル地域(ブルキナファソ、マリ、ガーナ、コートジボワール、べナン、トーゴ、ナイジェリアなど)に自生しています。シアカーネル(シアの種子中の胚)から抽出されるシアバターは、当社グループの植物性油脂事業において重要な原料です。シアバターは、食品、製菓、スキンケアなどさまざまな用途に適した汎用性の高い油脂で、ココアバター代替脂(CBE)として広く使用されています。シアの実は、西アフリカの農村部の女性たちによって5月から6月にかけて採取され、一次加工(煮沸、脱穀、乾燥)が行われています。
現地では、農業用地の開墾によりシアの自生地が減少しているほか、シアの採取や一次加工は、手作業で行われる重労働や労働安全衛生が課題となっています。
当社グループでは、Tebma-Kandu協同組合※1との緊密な協力、農家に対するトレーニング、立証されたハードウェアを通じて、西アフリカの女性の専門性を高めエンパワーメントすることで、シアカーネルの供給への関与を促すことで、サステナブルなサプライチェーンの実現を目指します。そのため、「責任あるシアカーネル調達方針」に基づき、下記の取り組みを推進しています。
- 地域レベルまでのトレーサビリティを継続的に高める
- Tebma-Kanduプログラム※1を通じて、提携した女性協同組合から調達するシアカーネルの量を継続的に増加させる
- Tebma-Kandu協同組合対象地域での、苗木の植樹による緑地保全への貢献と、苗床管理トレーニングを促進する
- シアカーネルとシアバターの現地加工を通じて、西アフリカ内地域の価値創造や雇用創出、従業員の教育を進める
- フジ オイル ガーナの工場で使用するエネルギーの非化石燃料化※2をさらに進め、環境フットプリントを改善する
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※1 Tebma-Kandu協同組合、Tebma-Kanduプログラム:「Tebma-Kanduプログラム」をご参照ください。
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※2 非化石燃料化:シアカーネル搾油後の油粕(ミール)などを非化石燃料として使用。

西アフリカに自生するシアの木の実

リスク管理
当社グループでは、ESGマテリアリティ・サステナビリティ課題領域「サステナブル調達」に関するリスクと機会を、全社重要リスク項目と関連づけながら、体系的に管理しています。
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全社重要リスク
リスク分類「環境・人権」、「調達」 -
サステナブル調達マネジメント>リスク管理
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/procurement/#risk_management
Tebma-Kanduプログラム(対象地域:ガーナ)
Tebma-Kandu※は、「責任あるシアカーネル調達方針」の実現に向けた推進プログラムとして、2021年にガーナ北部の23の女性協同組合とともに開始したシアカーネルのサステナビリティ・プログラムです。5年目を迎え、プログラムへの参加を希望する女性協同組合も増えています。着実に増加する登録協同組合の組合員に対して、事前融資やビジネススキル、組合運営、品質管理に関するトレーニングを提供することで、組合員の能力向上や地域価値創造への貢献を目指しています。また、収穫したシアカーネルの保管用に建設された倉庫を活用し、シアのオフシーズンに代替収入を得るための活動も開始しました。
フジ オイル ガーナは、西アフリカでシアカーネルから搾油されたシアバターを自社工場で加工しており、現地従業員の工場運営、品質管理、安全性に関するトレーニングに取り組み、地域社会における価値と雇用の創出に努めています。
Tebma-Kanduプログラムのもと、2024年までに75の女性協同組合と覚書を締結しました。また倉庫の建設に資金を提供し、女性たちが協同組合を通じて指定された品質のシアカーネルを大量に供給できるようハードウェアの提供も行っています。
収穫期が始まる前に、特別な条件や制限を設けることなく事前融資を行い、シアを採取する女性たちが、不当な低価格で仲介人にシアカーネルを売る必要がないようサポートしています。
なおこのプログラムには、組合員の能力開発、森林再生プロジェクト、環境フットプリントの削減などが含まれています。
このイニシアチブは、いままでにガーナ北部で働く約4万人の女性たちをエンパワーメントし、協同組合の生産性向上をサポートしてきました。2025年度には、このプログラムの参加する女性協同組合の数を100まで増やす予定です。
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※ https://www.fujioil.co.jp/news/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/03/11/20210311_news_j_Tebma-Kando.pdf
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Tebma kanduの状況はこちらからもご確認いただけます(英語)
指標と目標
〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満
中長期目標 | KPI | 2024年度目標 | 2024年度実績 | 自己評価 | |
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2030年 | 2025年 | ||||
森林保全、 女性のエンパワーメント支援 |
植樹6,000本/年 | 植樹6,000本/年 | 植樹6,000本/年 | 7.018本 | 〇 |
Tebma-Kandu協同組合※1からの調達を含め、地域レベルまでのトレーサビリティ:75% | 70% | 70% | 91% | 〇 | |
Tebma-Kanduプログラムからのシアカーネル調達比率※2:50% | 30% | 20% | 15% | △ | |
西アフリカでのシアカーネル搾油・分別比率:100% | 100% | 100% | 100% | 〇 | |
フジ オイル ガーナで使用する非化石エネルギー※3比率(蒸気発生用):100% | 100% | 100% | 70% | △ | |
Tebma-Kandu協同組合の代替収入のための、当社グループ寄贈倉庫活用比率:80%※4 | 20% | ー | ー | ー |
- ※1 Tebma-Kanduプログラムの登録協同組合とTebma-Kanduの原則に従って活動するパートナー。
- ※2 KPIを「Tebma-Kandu協同組合からのシアカーネル直接調達比率」から「Tebma-Kanduプログラムからのシアカーネル調達比率」に変更。Tebma-Kanduプログラムの考え方に基づいて当初から活動している協同組合に加えて、新たにTebma-Kanduの趣旨に賛同したパートナーからの調達数量を含める。
- ※3 シアバターを分別した際に得られる副産物であるシアオレインをバイオマス燃料として使用。
- ※4 地域における価値創造に関するKPI「フジ オイル ガーナの正規雇用の社員数:50%増加(2017年比)」は2022年度時点で達成したため、それに代わる新たなKPIを2024年度から設定。フジ オイル ガーナが寄贈したシアカーネル保管用倉庫のうち、空きスペースやシアシーズン以外の期間を利用して、シア以外の収穫物の保管に活用して収入を生み出している倉庫数の比率。
考察
2024年度は多くの外的要因がシアカーネルのサプライチェーンに影響を与えました。シアの実の作柄は全般的にかなり悪く、西アフリカのいくつかの国では、シアカーネルの輸出が禁止されました(輸出できるのは、シアバターのみ)。シアの価格は歴史的なレベルで高騰し、カカオ価格も高騰している中、チョコレート用油脂(CBE)はココアバターと同等のものとして使用されるため、需要は旺盛でした。
トレーサビリティについては、高水準である91%を維持しましたが、Tebma-Kandu協同組合や、Tebma-Kanduの原則に従って操業しているパートナーに由来する総量は、収穫量が少なかったため確認できませんでした。
2024 年度からは新たなKPIを導入しました。シアの収穫と活動は季節的なものであるため、協同組合にとって、倉庫は他の物流ビジネスの可能性のために自由に利用できます。そのため、2030年度までに、Tebma-Kandu協同組合の代替収入のための、当社グループ寄贈倉庫活用比率80%を追加しています。
なおTebma-Kanduプログラムの登録協同組合との連携はより緊密となり良好です。将来の可能性や協同組合の在り方について議論を行っており、このプログラムへ参加を希望する女性グループも増加しています。
Next Step
2025年度は、Tebma-Kanduプログラムに参加する協同組合の数を100まで拡大し、以下の2025年度目標に取り組んでいきます。
- 6,000本/年の植樹
- 地域レベルまでのトレーサビリティ:2025 年度末までに70%
- Tebma-Kanduプログラムとその原則に従って活動するパートナーからのシアカーネル調達比率:30%
またワシントンに本部を置くIFPRI(国際食料政策研究所)は、Tebma-Kanduプログラムの活動に注目しており、Tebma Kanduの協同組合に、効率改善と付加価値向上のためのイノベーションとしてのツールや物流手段を提供し、さまざまな福祉改善効果を生み出すことを期待して、一定期間プログラムに関与することを決定しています。

Tebma-Kandu女性協同組合との話し合いの様子
具体的な取り組み
外部団体との協業
フジ オイル ガーナは、2013年からGlobal Shea Alliance(GSA)、2015年からShea Network Ghanaに参画しています。主な活動内容は以下のとおりです。
- シアカーネルを保管し、そのほかの収入を創出するための倉庫の提供
- 女性のためのビジネス研修
- シア製品の国際展開
- 労働安全衛生イニシアチブ
- 緑地保全管理の研修
- 植林資材の研究開発
- 緑地保全に関する試験的なプロジェクト
フジ ヨーロッパ アフリカは、オランダ政府の資金提供によるコンソーシアム「シアサプライチェーンにおける児童労働デューデリジェンス・プロジェクト」に参画しています。このプロジェクトの目的は、シアカーネルのサプライチェーンにおける児童労働リスクを低減することであり、他の業界関係者と協働しています。
シアの木の生息域内の緑地保全(対象地域:ガーナ)
ガーナ北部では、土地開墾のために、シアの木が深刻なペースで伐採されています。また、木炭利用のための伐採も増加傾向にあります。
2024年度は地元企業であるEco Restoreと連携し、シアや郷土樹木の苗木を7,018本植えました。
苗木の生存率を向上させるには、管理をする女性たちに適切な栽培技術を教えることが重要です。2025年度には植林を6,000本とし、植林だけでなく、研修も実施する予定です。なおこれまでの苗木の生存率は非常に高いことを確認しています。

苗木の世話の研修の様子
エネルギー転換による環境負荷低減(対象地域:ガーナ)
フジ オイル ガーナは、シアカーネルやシアバター加工時のCO2排出や廃棄物を削減するため、シアバター生産過程で排出される搾油後の油粕(ミール)等副産物の一部を燃料化するなど、生産に使用するエネルギーを鉱物油から非化石燃料へ転換しています。また、副産物の燃料利用は、薪の使用量削減による森林破壊の減少や節水、エネルギーコストの削減にもつながります。同社では工場で使用する非化石エネルギー比率100%を目標としています。