グループ会社一覧

循環型フードシステムの構築

マテリアリティ

環境に配慮したものづくり

ガバナンス

不二製油グループは、取締役会の諮問機関として代表取締役社長兼CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1を設置しています。サステナビリティ委員会では、ESGマテリアリティ重点項目※2「循環型フードシステムの構築」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、執行役員 研究開発本部長管掌のもと、取り組みを推進しています。

戦略

循環型フードシステムとは、原料の生産から食品の製造、加工、流通、消費、廃棄といった全ての段階で、限りある資源を循環させて利用することで、環境負荷を低減する仕組みを指します。
食品の大量消費大量廃棄は、資源の有効利用を妨げ、廃棄物処理の負担を増加させます。そのことが気候変動や自然へのダメージにもつながります。
当社グループは、製品のサプライチェーン全体における環境負荷低減を目指しています。原料調達や自社の製造工程だけでなく、顧客が当社グループの製品を加工する段階も含めた、製品のサプライチェーン全体で環境負荷を評価し、効率的に低減することが肝要と考えています。環境負荷低減に向けた取り組みの一環としては、原料の栽培工程における排出CO2の利活用が挙げられ、このような取り組みを継続的に実施することが、製品の製造工程におけるCO2の排出削減につながると認識しています。
これらの課題への対応を怠った場合、気候変動に伴う異常気象によって、生物多様性喪失をもたらすことをはじめ、原料調達、物流、製造など各方面のリスクが高まります。一方で課題への対応を進めることで、地球環境の保全による持続可能な原料供給の実現や、生産工程の効率化によるコスト削減、ステークホルダーからの信頼醸成につながる機会となり得ます。
環境ビジョン2030/2050で掲げるGHG排出量、水使用量、廃棄物量それぞれの削減目標の達成に向け、まずは自社の製造工程において環境負荷が低い加工技術の確立を目指します。また、原料の生産過程での地球環境の保全など、事業活動の全体を通じて俯瞰的に評価を行い、革新的な技術開発によるライフサイクル視点での環境負荷低減を目指します。

リスク管理

不二製油グループでは、ESGマテリアリティ・サステナビリティ課題領域「環境に配慮したものづくり」に関するリスクと機会を、全社重要リスク項目と関連づけながら、体系的に管理しています。

また当社以外の他機関による革新的な新技術創出によって市場環境に変化が生じた場合、循環型フードシステムの構築にあたり当社グループの技術的優位性が低下し、市場競争力が失われる点をリスクだと捉えています。この対応策として、多様な社外機関との共創活動を通じた技術開発を実施することで、当社事業領域や研究領域を拡大し、変化する市場環境への対応力を強化します。

指標と目標

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2024年度目標 2024年度実績 自己評価
CO2施肥環境下で収量増が期待できる大豆品種の選定 収量性が高い大豆品種を選定し、より多くのCO2を固定(再資源化)できる可能性が示された。
中規模栽培施設での栽培環境条件の検証 九州電力株式会社保有の植物工場設備で栽培試験を実施し、制御環境下での多段水耕栽培による栽培データを得た。

考察

当社製品の原料として使用される大豆をターゲットとした、循環型フードシステムの構築に向けて、清掃工場で排出されるCO2を回収し、植物工場で栽培する大豆に施肥することで、大豆の育成促進とCO2の有効活用を行うプロジェクトを実施しています。将来的には、佐賀市の清掃工場に設置済みの二酸化炭素分離回収装置を活用し、回収したCO2を利用して大豆を栽培する技術を構築、生育した大豆を当社グループの加工技術を用いたサステナブルな製品として、広く皆様にお届けしたいと考えています。本プロジェクトでは、基盤となる栽培技術構築を念頭に置き、研究開発を進めています。
大豆の植物工場の実現には、露地栽培に比べて高い生産性が必要です。実際の栽培が想定される植物工場設備での試験を実施し、栽培環境が大豆の生育に及ぼす影響についてデータを収集することで、植物工場栽培において最適に環境制御をするためのデータ取得につながりました。今後は選定した最適大豆品種を用いた栽培試験を実施し、生産性向上に向けた栽培条件を検討します。

Next Step

排出CO2の有効活用による環境負荷の低減を目指す中で、事業化につながる大豆の生産改善を当面の課題として認識しています。この課題への対策として、以下の2025年度目標に取り組みます。

  • CO2施肥環境下における中規模植物工場での栽培検証

具体的な取り組み

清掃工場から排出されるCO2を活用した国産大豆育成研究プロジェクト

気候変動ならびに人口増加に伴う食資源不足の解決に寄与する技術の創出は、当社グループの重要課題です。また、近年の食糧およびエネルギー資源価格高騰への対応策として、国産農作物を活用した「サステナブルでおいしい身体に良い食の提供」は、食料安全保障の面でも必要不可欠と考えています。
そこで2022年5月より、国産大豆の生産においてCO2を有効活用する共同研究を、佐賀市、国立大学法人佐賀大学、伊藤忠エネクス株式会社とともに開始しました。これまでに、CO2施肥による大豆の育成スピードと品質の向上に関わる研究および、育成促進に適した品種の選定や栽培技術の開発について研究を行ってきました。これらの研究から、令和5年度の日本における大豆の平均収量169kg/反(農林水産省作物統計)と比較し、1作当たり約3倍※1に増加する結果を得ることができました。
これまでの研究成果を踏まえ、佐賀大学構内に設置していた実験施設に加えて、九州電力株式会社の協力を得て同社保有の研究施設において、より精緻な環境制御※2を施すことで、さらなる収穫量の増大を目指した研究を進めていきます。

  • ※1 実験面積を1反当たりに換算した上で全量収穫が前提。

  • ※2 環境制御:温・湿度、酸素・二酸化炭素濃度など、環境を構成するさまざまな要素をコントロールすること。

九州電力研究施設外観(佐賀市)

植物工場内における栽培状況