経営企画本部長メッセージGRI:2-22
サステナブルな食の未来へつなぐ 経営と一体化したサステナビリティの深化

不確実性が高まる外部環境の変化に次々と見舞われた中で、サステナビリティはリスク管理強化のためにも重要であるとの認識のもと、事業軸ならびに機能軸のマネジメント強化とともに取り組みを進め、2025年4月から事業持株会社として新たな体制をスタートさせました。新体制におけるサステナビリティの推進を管轄する役員として説明させていただきます。
不二製油グループにおいて、経営戦略とサステナビリティ戦略は不可分一体のものとして捉えています。サステナビリティの推進は社会貢献活動にとどまらず、企業価値を持続的に向上させていくための経営の中核に位置づけています。
中期経営計画「Reborn 2024」では、ビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します」 の達成に向け、社会課題の解決と当社グループの成長を両立する「社会価値」と「経済価値」の共創を目指してきました。「Reborn 2024」には「新しい価値を生み出せる企業グループとして生まれ変わる」という強い想いを込めており、これまでの3年間は、まさに新しい価値を生み出す企業グループへと生まれ変わるための経営基盤を強化する期間と位置づけてきました。
この経営基盤強化のための基本方針の一つが、「サステナビリティの深化(経営戦略と一体化したサステナビリティ戦略)」です。サステナビリティへの取り組みを経営戦略と一体化させることで深化させ、環境や社会へのプラスの価値創出と中長期的な企業価値向上を目指しています。取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会では、ESGマテリアリティと事業戦略との連動性を高めながら議論を深めてきました。また、業務執行を兼務する取締役や執行役員の業務執行評価においては、中期経営計画「Reborn 2024」の基本方針と連動したESG目標が設定されています。
「サステナビリティの深化」における具体的なテーマとして、サステナブル調達による差別化、気候変動・生物多様性リスクへの対応、人材活用の3点を重点項目として推進しています。これらの取り組みは、食のバリューチェーン上に存在する社会課題への迅速かつ適切な対応策を提供するために不可欠であると考えています。
具体的な経営戦略とサステナビリティ戦略の連動は、以下の重点テーマに現れています。
- サステナブル調達による差別化: 主要原料であるパーム油やカカオなどの生産地における環境や人権に対する課題解決に取り組み、サプライヤーとの連携を強化することで、持続可能なサプライチェーンの構築を目指しています。この取り組みは、リスク低減だけでなく、当社グループの製品の付加価値や競争優位性を高めることにつながります。例えば、サステナブルなパーム油への取り組みは、お客様から多くの問い合わせをいただき販売機会の創出に結びついています。
- 気候変動・生物多様性リスクへの対応: 植物性食品の創出に取り組む当社にとって、気候変動への対応や生物多様性の保全と回復は重要な基本方針の一つです。2050年度ネットゼロおよびネイチャーポジティブに向け、バリューチェーン全体で環境負荷低減に取り組んでいます。製造工程の省エネルギーや再生可能エネルギーの導入、水使用量の削減、(植物性たん白素材の)副産物のアップサイクルのほか、バリューチェーン上の森林破壊防止や植樹などを推進しています。
- 人材活用: 多様な人材が能力を最大限に発揮できる風土を醸成し、イノベーションを起こしていくことは、新たな価値提供を加速するために重要です。ダイバーシティ&インクルージョン(DE&I)を推進し、安全安心な職場環境づくりや従業員の健康増進(健康経営)にも取り組んでいます。人材育成は持続的な成長に不可欠であり、ビジョンへの理解促進、グローバルに活躍できる人材や次世代役員候補の育成、多様な経験機会の提供などに注力しています。女性従業員の活躍も重要な課題として取り組んでいます。
これらの取り組みは、社会的責任と捉えるだけでなく、事業そのものに組み込まれています。例えば、製品開発の企画において、「おいしさと健康」に加えて、原料や製造プロセスの「サステナビリティ」が重要視されています。また、フードロス削減に貢献する長期保存技術や、高齢者の健康課題に寄与する機能性素材の開発など、社会課題の解決につながる製品を生み出しています。さらに、お客様の人手不足といった課題解決に貢献できる製品開発も行っています。
サステナビリティの取り組みは、ステークホルダーとの「共創」を通じて進められています。サプライヤー、顧客、事業パートナーなど、バリューチェーン上のさまざまなステークホルダーと協力し、知恵を出し合うことが、社会課題の解決や新たな価値創出に不可欠であると認識しています。ステークホルダーとの対話は、サステナビリティ経営の基盤であり、活動の改善にもつながっています。
このように、不二製油グループにとって、サステナビリティ戦略は経営戦略と一体化しており、2030年ビジョンの実現、競争力の強化、企業価値の向上に不可欠な要素となっています。今後も、人と地球の健康を支える植物性食品の創出という基本コンセプトのもと、サステナブルな食のバリューチェーン構築のために挑戦と改善を続け、ステークホルダーとともにサステナブルな食の未来を共創してまいります。
不二製油株式会社
執行役員
経営企画本部長
高橋 太郎