人材の確保と育成
マテリアリティ
人的資本と労働安全
方針
不二製油グループでは、「不二製油グループ憲法」※1ならびに2023年3月に策定した「不二製油グループ人権ガイドライン」※2に沿って、2023年度に新たに「人材戦略の運営方針」※3を定めました。また、人材戦略において「グローバルに貢献する食品メーカーとしてグループと従業員双方が持続的に成長し企業価値の向上を実現する」を目標に掲げています。
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※1 不二製油グループ憲法
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※2 不二製油グループ人権ガイドライン
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/policy/human_rights_guideline/
- ※3 「戦略」をご参照ください。
ガバナンスGRI:3-3
当社グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長兼CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1を設置しています。サステナビリティ委員会では、ESGマテリアリティ重点項目※2「人材確保・育成」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、上席執行役員 最高財務責任者CFO兼人事総務本部長管掌のもと、取り組みを推進しています。
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※1 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>ガバナンス
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#governance
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※2 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>指標と目標
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#index
戦略
当社グループは近年、大型M&Aにより事業拡大を進めてきたことで、連結従業員総数のうち約7割が海外エリアの従業員となりました。
このような変化の中で、改めて、「不二製油グループ憲法」のビジョンを実現し、持続的にグループを成長させるための鍵となるのは、グループの仲間である一人ひとりの力の発揮と成長だと考え、2023年度に、不二製油グループ人材戦略を作成しました。多様な人材がそれぞれの強みを発揮して主体的に挑戦し続け、一つのチームとなって企業価値向上に向けて活躍するためには、職場環境の整備を含む「健全な企業風土の醸成」と「公正な成長の機会(人材育成・ERによる情報共有)」の提供が必要です。そして組織の基盤として、挑戦が賞賛される環境と、DE&Iが確保された風土が求められます。
また、ウェルビーイングに貢献する事業を営む企業として、従業員自身が高いウェルビーイングを感じている必要があります。その上で、当社グループにおける経験を通した成長機会を提供することが、職場の魅力を高め、継続的に人材が充足する状況を生み出す機会となり得ます。
当社グループは4つの事業を営む製造業であり、企業成長に必要な能力や職種は多岐にわたります。世界的に人材の流動性が高まり、製造業への就業意欲が従来よりも下がる傾向がある中、多様な人材に魅力を感じてもらえる職場づくりを怠れば、事業継続のリスクが発生する恐れがあり、ビジョンの実現も叶いません。そのため、2023年度からは「人材確保・育成」をESGマテリアリティへ追加し、取り組みを強化しています。
不二製油では、2020年度より旧不二製油グループ本社にて開始した次世代経営層人材育成会議を継続し、グローバルでの経営人材候補の育成を行うと同時に、同会議に連なるポストマネジメント会議を実施しマネジメントポストの要件定義や、後任者候補の選定を進めてきました。また対象者の雇用形態を限定せず、以下3つのコンセプトに基づく研修プログラムの拡充を進めています。
- 多様な専門性の習得機会の提供
- 自律的なキャリア形成の支援
- 上司が部下のキャリアを真剣に考え、支援する風土の醸成

リスク管理
不二製油グループでは、ESGマテリアリティ・サステナビリティ課題領域「人的資本と労働安全」に関するリスクと機会を、全社重要リスク項目と関連づけながら、体系的に管理しています。
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全社重要リスク
リスク分類「災害・事故」「環境・人権」「調達」「労務・人事」
従業員とのエンゲージメント
不二製油グループでは、2023年度にエンゲージメントサーベイの実施を開始いたしました。
不二製油の従業員に対しては、年2回、「働きがい」を測定する9つのキードライバーについて数値で見える化し、会社全体、また組織ごとの課題を抽出、評価しています。これまでの合計4回のサーベイを通して、当社としての強みは、「組織風土」の構成要素の一つである「部署間での協力」に代表される『人間関係』、および、「職務」の構成要素の一つである「裁量」のスコアの高さから『まかせる風土』であることが確認できました。これらは、新制度で掲げる「チームで成果を出す」「共創力」の基盤であり、「技術の融合」や「顧客との課題解決力」といった価値創造の源泉となる強みの風土であると考えています。一方で、全社的な課題と捉えたのは「理念戦略」のスコアが低位な点です。また、2023年度の結果において、「組織風土」の構成要素である「挑戦する風土」「キャリア機会の提供」が食料業界平均スコアと比較して低く、創業以来のDNAである「挑戦」が必ずしも全社風土となっていない点も優先対処すべき課題と受け止めています。
また、海外グループ会社の従業員に対しては、年1回、「HATARAKIGAI」を高めることを目的に、グローバルエンゲージメントサーベイを実施し、各社においてアクションプランを作成して改善を進めています。これまでの合計2回のサーベイを通して、「協働」や「チームワーク」などに強みがあることが示唆され、「チームで成果を出す」基盤があることが、日本も含め、当社グループ全体の強みであると捉えています。一方で、グループ全社のマネジメント層において、「個人を尊重して成長を支援する」といった今の時代の新しいリーダーに求められる考え方やスキルの不足、また、ミッション・ビジョンや方針・戦略を語れるリーダーの不足が見受けられ、これは日本も含めたグループ全社の傾向です。リーダー育成により全社風土を変えていくことが当社グループ全体の大きな課題と捉えています。
従業員が不二製油グループの一員であることにより価値を見出し、誇りを持って働くことができ、個人とグループの双方が成長できる不二製油グループとなるよう、サーベイの結果を活用した「HATARAKIGAI」の向上に一層注力していきます。
- ※ 詳細は「統合報告書 2025」をご参照ください。
統合報告書
労使間の対話GRI:2-30、407-1
不二製油では、従業員と会社はともに支えあう存在であるという考えのもと、労使間の対話を重視しています。会社側は人事部門が対話の窓口となり、創業と同時期に設立された不二製油労働組合とともに、75年にわたって従業員の働きやすい職場環境の整備に尽力してきました。毎月1回、労使間(会社側人事総務部門の代表と労働組合中央執行委員にて構成)にて、従業員がやりがいを持ってその力を最大限に発揮し、成長・活躍するための対話の場を設けています。2024年度には、労働組合の春討付帯要求「副業制度導入に向けた話し合い」を経て、非雇用型副業制度を導入しました。
なお、不二製油労働組合はユニオンショップ制を採用し、不二製油の執行役員・管理職を除く正社員の加入率は100%です。
指標と目標
〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満
2024年度目標 | 2024年度実績 | 自己評価 | |
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人材の確保 | <不二製油> 新卒採用手法の見直し |
KPI:システムコース2名→(実績)2名 |
〇 |
<不二製油> 新規正社員採用者の定着率向上 |
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〇 | |
<グループ全体> 海外駐在員ポストマネジメント |
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△ | |
人材の育成 | <グループ全体> 次世代経営人材の育成 |
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〇 |
<不二製油> マネジメント人材の育成(ポストマネジメント、部長・課長) |
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ー | |
<不二製油> グローバル人材の育成(海外駐在員候補者の育成と海外グループ会社幹部候補者の抜擢育成) |
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〇 | |
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△ | ||
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× | ||
<海外> 従業員の能力開発とキャリアアップへの投資 |
<ブラマー チョコレート カンパニー(米国)>
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〇 | |
<東南アジアエリア>
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〇 | ||
<中国エリア>
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〇 |
考察
人材確保においては、日本において、ミスマッチ入社の回避をテーマとして、新卒採用手法の見直しに取り組みました。学生のキャリア志向がますます強まっている現状に鑑み、従来事務系総合職として一括で実施していた選考を、システムコース、営業コース、スタッフコースとして、選考段階から初期配属先を予め示した上で選考を実施しました。また、新卒・中途採用ともに、選考段階での業務内容の丁寧な説明を継続し、今後もミスマッチ入社を回避するとともに、定着率向上につなげていきます。
人材育成においては、日本において、2021年度に策定した3つの基本コンセプトに沿った新しいプログラムを順次投入しました。多種多様な語学研修の充実化、将来的な海外赴任予定者に対して日本で受けられる研修プログラムの拡充など「GLOBAL プログラム」を強化し、グローバルに力を発揮できる人材の育成を進めています。また、2023年度に開始した従業員の成長意欲を刺激するための施策、カフェテリア形式の「FUJIラーニングカフェ」を強化し、自律自走を促す体系としています。2023年度から開始した社内公募制度、2024年度に導入した非雇用型業務を対象とした副業制度のいずれにおいても、全直接雇用従業員を対象とし、等しく、キャリアの自律を考え、挑戦し、成長する機会を提供しています。
海外では、米国・東南アジア・中国で各社企画のマネージャー研修が実施されました。また、エンゲージメントサーベイの結果を受け、2025年度以降もリーダー向け研修が数多く企画されており、全社方針のもと、各社における育成施策の質の担保や継続的な実施の支援を行っていきます。
多様な人材が能力を発揮して成長し、グローバルで一体となって活躍できるよう、事業戦略と連動したタイムリーな施策を継続し、当社グループの持続的成長を担う人材の確保、育成に努めます。
Next Step
事業持株会社体制への移行に伴い、より、経営戦略・事業戦略との連動を強化した施策に取り組んでいきます。
経営戦略との連動強化
- 指名・報酬諮問委員会による人的側面のガバナンス強化
- グループ経営人材の育成
事業戦略との連動強化
- 事業本部への人事担当(HRBP)の配置
- 海外駐在員の適正配置強化
- グループグローバル人材の育成
具体的な取り組み
グローバル経営を支える人材育成GRI:404-2
海外戦略の加速に伴い、グローバルに力を発揮できる人材の登用・育成を目指して、取り組みを推進しています。
マネジメント人材の育成
不二製油では、グループを牽引する多様な経営人材の育成を目的に、2020年度より旧不二製油グループ本社にて次世代経営層人材育成会議で、将来の経営人材の要件を定義し、候補者のグローバルかつ戦略的な育成について多面的な協議を行っています。国籍や性別などにとらわれずグループ全体より対象者を選定し、グループを牽引する多様な経営人材の育成を進めています。
同時に、不二製油では2021年度から、ポストマネジメント会議を実施し、順次部門長・部長・課長ポストの要件を定義し、後任候補者に関する多面的な協議を行ってきました。
また、将来の管理職層の早期育成を図るべく、2016年度から管理職候補層に対して、グループ討議や面接演習などを通じて集団場面・対個人場面での行動傾向を把握するアセスメント研修を実施しています。本研修を通じて、マネジメントのあるべき姿を認識するとともに、自身の課題と強みを客観的に把握します。受講後に上司や人事部とのフィードバック面談やOJT計画の立案から振り返りまで行い、周囲が育成に深く関わることで、確実な成長につなげています。
グローバル化を支える人材育成
グローバルで事業を継続的に推進・拡大するための要となる経営資源として、当社グループのグローバル経営を推進する牽引役、海外法人の経営人材と事業牽引人材の育成を重視し、まずは日本から取り組みを強化しています。
語学力アップのための自己啓発や集合研修を実施するとともに、専門領域に応じた海外駐在など、グローバルマインドを醸成しグローバル視点でビジネス経験を積むための取り組みを行っています。
不二製油で2021年度から本格的に開始した海外トレーニー制度では、半年にわたる海外での語学研修後、海外現地法人でOJT研修を中心とした業務研修を実施しています。さらに、拡大する海外事業の中枢を担う人材の育成を目的に、「日本国内で受講できる海外人材育成研修」を2023年度に開始しました。2024年度には第2期生を選抜、累計10名の選抜者が研修に参加しています。自ら課題を抽出し解決する実践力や、異なる文化・習慣・環境を受容する素地形成を促し、将来の海外グループ会社の経営人材候補の早期育成に努めています。
キャリア支援体制GRI:404-2
不二製油で勤務する従業員に対し、階層別研修や選抜・手上げ式研修、カフェテリア式などの幅広い研修、および、通信教育受講補助金制度によるスキルアップ支援、業務に応じた資格取得奨励や学習支援を実施しています。また、評価フィードバック時に成長ポイントや啓発ポイントを上司と共有する機会や、全正社員を対象にキャリアの棚卸しと今後のキャリア展望を可視化した「キャリアアップコミュニケーションシート」に基づく上司との面談機会を年に一度設け、キャリアの形成と適正配置による活躍の場の提供に努めています。今後も、自律的にキャリアを考え、それを上司が支援する風土を整備していきます。
不二製油(日本エリア) 2024年度教育体系
