フードロスの削減とアップサイクル
マテリアリティ
環境に配慮したものづくり
ガバナンス
不二製油グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長兼CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1を設置しています。サステナビリティ委員会では、ESGマテリアリティ重点項目※2「フードロスの削減とアップサイクル」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、執行役員 研究開発本部長管掌のもと、取り組みを推進しています。
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※1 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>ガバナンス
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#governance
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※2 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>指標と目標
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#index
戦略
今後、世界の人口増加および気候変動や生物多様性の喪失による食料需給のひっ迫が危惧される中、限りある食資源を効率よく使用することは、食品素材メーカーにとって重要な課題です。また、フードロスの削減は、SDGsの目標12のターゲットとしても明記されており、重要なグローバル社会課題と認識しています。これらの社会課題へ対応することは企業の責務であり、対応を怠った場合は、社会からのレピュテーションが低下するリスクが高まります。一方、対応できた場合は、廃棄処理コストの低減も含めた製品のコストダウンにつながり、経済的な効果が期待できます。
当社グループは食品中間素材メーカーとして、顧客の製品の賞味期限延長に貢献する製品を提供することで、最終消費者における食品廃棄率を低減するとともに、アップサイクルによる資源の有効活用を目指します。
リスク管理
不二製油グループでは、ESGマテリアリティ・サステナビリティ課題領域「環境に配慮したものづくり」に関するリスクと機会を、全社重要リスク項目と関連づけながら、体系的に管理しています。
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全社重要リスク
リスク分類「戦略」「環境・人権」「調達」
またR&Dの取り組みでは、日々変化する多様な社会ニーズを素早く捉え、課題解決するために、以下のような取り組みを行っています。
- 課題解決に貢献する商品コンセプトとアプリケーション処方をパッケージにした顧客提案活動
指標と目標
〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満
2024年度目標 | 2024年度実績 | 自己評価 |
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食品の日持ちや賞味期限を延長する手法や製品の開発 | クリームの冷凍解凍技術の進化や、独自発酵技術によるチーズの風味向上を達成した製品等、10件上市 | 〇 |
廃棄物の積極的有効利用による新しい機能や価値の追求 | 大豆食物繊維や大豆多糖類の用途開発が進行、採用開始 | 〇 |
考察
賞味期限延長につながる商品の品質保持への理解と連携が円滑に進んだ結果、新規クリーム類が複数社に採用されました。また顧客の中には、新たな売り場への商品展開も可能となる事例がありました。
Next Step
できたてのおいしさをより長期間損なわない素材・技術の開発や、廃棄物の積極的な有効利用を追求することに主眼を置き、2024年度に引き続き2025年度も以下の目標に取り組みます。
- 食品の日持ちや賞味期限を延長する手法や製品の開発
- 廃棄物の積極的有効利用による新しい機能や価値の追求
具体的な取り組み
おいしさを維持する素材の開発
食品の賞味期限の延長は、国がフードロス削減に向けて推進する重要施策の一つです。不二製油は、品質維持を可能にする技術や素材の提供を通じ、レトルト食品など長期間保存可能な食品をさらにおいしく、バリエーション豊かにすることで、フードロス削減にも寄与しています。
昨今の人手不足やフードロス対策もあり、フロチル菓子※(洋菓子類)の需要がますます増加しており、冷凍保管に耐え得るホイップクリームの品質設計が求められています。こうした課題に対し2024年度は、豊富な植物性油脂素材と独自の乳化技術を組み合わせることで、冷凍耐性のあるホイップクリームを開発、市場での採用も伸びています。
また、「もっと多くの人に熟成チーズのおいしさを手軽に味わってもらえたら」という思いのもと、10年以上にわたる研究により独自の発酵プロセスを開発しました。これにより、熟成系チーズと同等の風味バランスと香料に頼らずとも自然なパルミジャーノレッジャーノ様の芳香な香りと扱いやすさを実現し、「本熟ⓇフロマージュP」を製品化しました。お客様からは少量でも風味を強く感じるためチーズ感が演出しやすいと好評をいただいています。
- ※ フロチル菓子:フローズンチルド菓子。

本熟ⓇフロマージュP

使用例:チーズパスタ

チーズケーキ
アップサイクル素材「ソイビオMA」を汚染土壌対策分野で展開
不二製油(株)は、大豆ミートをはじめ、栄養機能に優れる大豆のタンパク質やペプチドなどの食品素材を、長年提供しています。これらの食品加工では、タンパク質を分離し、加熱濃縮した後、天然の栄養成分を豊富に含んだ大豆ホエイが副生されます。この副生物である大豆ホエイをアップサイクルした、資源循環型バイオレメディエーション※用浄化促進剤「ソイビオMA」を上市しています(販売代理店:昭栄薬品(株))。「ソイビオMA」は汚染物質を分解する微生物の栄養源として働き、特に揮発性有機化合物質(VOCs)や油に汚染された工場敷地内などの土壌のバイオレメディエーションに有効です。また、従来の土壌改良薬剤より安価なため、施工コストを低減できます。汚染された地下水の浄化案件など、年間数件ですが安定した採用実績があります。
「ソイビオMA」を用いた環境にやさしいVOC浄化促進工法は、東京都「地下水の汚染の拡大防止技術」に認定されました(2024年度採択)。これを契機に本浄化方法の普及拡大を目指します。
- ※ バイオレメディエーション:微生物の作用で環境汚染を修復する技術。

ソイビオMA