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重点項目

課題認識

不二製油グループは、積極的な海外展開の結果、連結従業員の約7割を海外拠点で働く従業員が占めています。16か国45社に展開し、多様な人材が活躍するグローバル体制を構築しています。2025年4月に事業持株会社制へ移行し、全社一体化を進める中で、地域・組織ごとに異なる価値観や慣行を前提としながらも、グループとして一貫性のある判断と迅速な実行を実現する重要性が高まっています。
一方、当社グループを取り巻く事業環境は、自国第一主義や分断の進行に加え、地政学リスクやサプライチェーンリスクの高まりなど、不確実性が一層増しています。このような環境下では、単一の視点や過去の成功モデルに依存した意思決定では変化への対応力が低下し、事業機会の逸失やリスク対応の遅れにつながるおそれがあります。また、従業員の人権が十分に尊重されないことによる社会的信用の毀損や、集団浅慮(グループシンク)に起因する意思決定が企業価値を大きく損なうリスクも顕在化しています。
こうした課題認識のもと、当社グループは、多様性を「組織の力」へと転換することを重要な経営課題と位置づけています。多様な人材の知見や経験を意思決定に取り込み、各国・各組織に存在するバリアーや分断の解消に取り組むとともに、公正な機会提供と、心身ともに安全・安心で多様性が尊重される環境を整備することで、個々の力の最大化を図ります。これにより、不確実な環境下における課題解決力およびイノベーション創出力の向上につなげていきます。
また、世界的に人材の流動性が高まる中、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重視した経営を推進することで、従業員のHataraki-Gaiの向上を図り、従業員と会社の持続的な成長の好循環を創出していきます。

  • ※ Hataraki-Gai:働きがい。人材戦略において、グループ共通の社内用語として使用。

DE&Iビジョン

Hataraki-Gaiの向上を支える組織カルチャーの一つとして、当社グループは新たなビジョンのもとDE&Iを推進しています。特定のグループへのポジティブアクションが、かえって分断を生むことのないよう、「個」に焦点を当て、それぞれの違い=“十人十色”を楽しむことから取り組みを進めています。
一人ひとりの“強み”や“おもろい”を尊重し、それらが組織全体の力となるよう、まるで多様な図柄が調和して一つの美しい全体像を描くパッチワークキルトのように、多様性を組織の力へとつなげていきます。

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リスク管理の取り組み

従業員とのエンゲージメント

当社グループでは、グローバルに活躍できる、またイノベーションを創出できる人材の定着と強化を、リスク低減に向けた重要な取り組みと位置づけています。その一環として、従業員のHataraki-Gai向上に向けた現状の可視化と改善アクションの推進を目的に、2023年度よりエンゲージメントサーベイを実施しています。
不二製油(株)では、従業員を対象に年2回、「働きがい」を測定する9つのキードライバーについて数値で可視化し、全社および組織ごとの課題を抽出・評価しています。これまでの結果から、「組織風土」の構成要素の一つである「部署間での協力」や「健康」「環境」といったキードライバーはベンチマークと比較して安定的に高い水準にあり、「働きやすい環境」や「仕事仲間との良好な人間関係」が不二製油(株)の強みであると認識しています。これらは「チームで成果を出す」「共創力」の基盤となり、「技術の融合」や「顧客との課題解決力」といった価値創造を支える風土であると考えています。
また、サーベイ開始以来、全社重点課題であった「理念戦略」のスコアは2025年度に大きく改善しました。CxOによるタウンホールミーティングを全事業所で開催するなど、経営層による継続的なコミュニケーション強化により、経営方針や事業戦略への理解・納得が深まったものと捉えています。
海外グループ会社においては、年1回のグローバルエンゲージメントサーベイを実施し、各社でアクションプランを策定の上、改善を進めています。これまでの結果から、「協働」や「チームワーク」に強みがあることが示唆され、グループ全体として「チームで成果を出す」基盤があると認識しています。一方で、グループ全体のマネジメント層においては、「個の尊重と成長支援」および方針・戦略を自らの言葉で語る力の強化が課題となっています。
これらの課題に対応するため、不二製油(株)ではマネジメント研修の充実化を図るとともに、海外グループ会社に対しては2025年度のグループ共通重点領域を設定し、アクションプランの策定を必須化することで、リーダー育成を推進しています。

指標と目標

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2025年度目標 2025年度実績 自己評価
グループ全体 意思決定層における多様性の確保 ・新体制に伴い、多様性指標と対象範囲を見直し(2026年度に再定義) ×
(再設計中)
DE&I方針の策定、浸透 ・DE&Iビジョンを作成
・グローバルエンゲージメントサーベイにおいて、グループ共通重点領域を設定し、展開
グループ横断のエンゲージメント推進チームの組成、チームによる従業員のエンゲージメント向上を図る施策の実施 ・2025年6月より「Engagement Champions Team」運用開始(推進者育成、エンゲージメントサイクル定着支援)
不二製油(株) Hataraki-Gaiの向上
・KPI:エンゲージメント全社総合スコアの改善
・KPI達成率:75%
多様な働き方の促進 ・再雇用嘱託制度の一部改定
障がい者の長期活躍の支援 ・外部農園「○ joy FARM FUJI(エンジョイファーム不二)」における活躍支援
・事業所内での職域拡大

考察

2025年度は、不二製油(株)人事にDE&I推進課を新設し、DE&Iビジョンを新たに策定しました。エンゲージメントサーベイの課題である「個の尊重」はダイバーシティ推進と親和性が高く、また、経営方針や事業戦略への理解・納得感の向上はインクルージョンの強化につながることから、DE&Iの推進とエンゲージメントを起点としたHataraki-Gaiの向上を一体的に推進しています。
グループ全体の取り組みとしては、海外グループ会社20社が参画するグループ横断のタスクフォース「Engagement Champions Team」を立ち上げ、推進リーダーの育成および各社のエンゲージメントサイクル(把握・計画・実行・進捗確認)の強化を進めました。また、本チームを通じてグループ共通重点領域を設定・展開し、方針の浸透と各社のアクション推進を図っています。さらに、役員報酬の非財務KPIとして不二製油(株)のエンゲージメント全社総合スコアを設定し、経営のコミットメントのもと施策の実行を加速しています。
一方で、前中期経営計画において指標としていた「意思決定層における多様性の確保」については、新体制への移行に伴い、多様性指標および対象範囲の再設計が必要となったため、2026年度に再定義することとしました。現状では、不二製油(株)の取締役11名のうち女性は2名(18%)で、いずれも独立社外取締役であり、社内取締役および執行役員に女性がいない点は課題の一つです。女性管理職比率はグループ全体で29.8%、日本本社の不二製油(株)で16.3%と着実に上昇しているものの、特に日本においては改善の余地があります。今後は、役員候補となり得る女性人材の育成・配置を強化し、重要ポストへの登用機会を拡大することで、社内からの女性役員の輩出につなげていく必要性を認識しています。
また、不二製油(株)では、多様な働き方の促進に向けた制度改定の一環として再雇用嘱託制度の一部見直しを行い、人手不足の生産現場における継続雇用を推進しました。さらに、障がい者の長期的な活躍に向けた支援体制を見直し、外部施設「○ joy FARM FUJI(エンジョイファーム不二)」での支援に加え、事業所内での職域拡大に向けて、社内ジョブコーチの配置や産業医との連携の仕組みを整備しました。
従業員一人ひとりが当社グループの一員であることに価値と誇りを感じ、個人とグループの双方が成長できる企業を目指し、今後もサーベイ結果を起点としたDE&Iの推進とHataraki-Gaiの向上に取り組んでいきます。

社会からの評価

2026年6月時点までの、ダイバーシティに関連する主な外部評価は以下のとおりです。

不二製油(株)

  • 2017年8月

    厚生労働省「プラチナくるみん」認定

  • 2025年11月

    大阪市女性活躍リーディングカンパニー認証 継続取得(三つ星認証)

ハラルド(ブラジル)
Great Place To Work®(GPTW)働きがいのある会社ランキングにおいて、以下の2つの認定取得

  • 2026年3月

    Great Place To Workの認定(9年連続)

  • 2026年5月

    ブラジル農業関連企業における働きがいのある中規模企業トップ10

Next Step

事業持株会社制への移行に伴う経営方針である「全社一体化」を加速するため、DE&Iの推進とHataraki-Gaiの向上を一体で進めます。グループ横断の推進体制を活用し、各社の自律的な取り組みを支援しながら、グループ共通重点領域の改善とKPI達成を目指します。

グループ全体

  • Hataraki-Gaiの向上(日本KPI:エンゲージメント全社総合スコア)
  • DE&Iロードマップの策定
  • 「Engagement Champions Team」による従業員のエンゲージメント向上を図る施策の実施

日本

  • 多様な働き方の促進
  • 障がい者の長期活躍の支援

具体的な取り組み

グループ横断のエンゲージメント推進チームの組成

当社グループでは、2022年度よりエリア・個社ごとにDE&I推進責任者を任命し、各エリア・個社主体でのDE&I推進活動を通じて、ビジネスリスクの低減と新たな価値創造によるリターン向上を目指してきました。一方で、各社の裁量に委ねる範囲が大きかったことから、課題設定や取り組みの方向性・粒度にばらつきが生じ、グループ全体としての一体的な推進には改善の余地がありました。
この課題を踏まえ、2024年度からは、エンゲージメントサーベイの結果を起点に各社で目標を設定し、①サーベイ結果の社内共有、②アクションプランの策定、③施策実行の推進という一連のプロセスについて、不二製油(株)人事がモニタリングする体制を構築しました。
さらに2025年度には、不二製油(株)人事にDE&I推進課を新設し、DE&Iの推進と、エンゲージメントを起点としたHataraki-Gai向上を一体的に推進する方針としました。エンゲージメントサーベイでの課題である「個の尊重」はダイバーシティの推進と親和性が高く、また、経営方針や事業戦略への理解・納得感の向上はインクルージョンの強化につながるためです。
これらの取り組みを、経営戦略として掲げる全社一体化の推進における重要施策と位置づけ、海外グループ会社20社が参加するグループ横断タスクフォース「Engagement Champions Team」を立ち上げました。DE&I推進課が事務局となり、各社の取り組み状況を可視化・共有するとともに、相互の連携と学習を促進し、一体感の醸成を図りながらエンゲージメント向上を推進しています。
また、推進者向けの育成研修やグループ共通重点領域の設定・展開を通じて、各社におけるエンゲージメントサイクルの定着と実効性向上を支援しています。

多様な人材の活躍推進

女性の活躍推進

1999年度に不二製油(株)のトップ方針として女性活躍推進が掲げられ、女性活躍推進委員会を設置し、本格的な取り組みを開始しました。
2016年度からは、内閣府の「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言に歴代CEOが賛同しており、従業員や社会に対して、経営におけるダイバーシティの重要性を発信しています。
一方で、2026年3月末時点における不二製油(株)の管理職に占める女性比率は16.3%にとどまっており、先駆的に取り組みを開始してきた経緯を踏まえると、意思決定層における多様性は十分とはいえない状況です。今後は、育成や登用の機会における障壁を取り除き、女性人材の活躍をさらに促進していく必要があると認識しています。

ライフイベントとともに描くキャリア

不二製油(株)では、1992年の育児休業法施行を契機として、育児休業を活用する女性従業員が増加してきました。一方で、育児休業後のキャリア形成には課題がありました。
そのため、2014年度以降は支援のあり方を見直し、従来の雇用継続を主目的とした制度に加え、ライフイベントを乗り越えながら主体的にキャリアを構築できるよう支援する制度を拡充しています。
現在は、以下のとおり妊娠期から復職後まで一貫したフォロー体制を整備しています。

妊娠

  • 妊娠期間中の体調不良など相談窓口
  • 育休前面談

産育休

  • 育休時賞与保証(20%)
  • 育児休業(最長子が2歳になった後の最初の4月末まで取得可能)
  • 育児コンシェルジュサービスによる復帰支援
  • 通信教育利用補助の継続

復帰後

  • 小学校3年以下の子を養育する従業員対象の育児のための短時間勤務制度の整備
  • ベビーシッター利用補助
  • テレワーク制度、コアタイムなしのフレックス制度の活用

また、男性の育児参加を促進するため、配偶者の出産を迎えた男性従業員に対して育児休業制度に関する情報提供を行い、取得を推進しています。その結果、2025年度の男性育児休業取得率は89.5%(平均取得日数29.8日)となりました。近年では長期取得も増加しており、2025年度は34名中13名が1ヵ月以上取得しています。交替制勤務を含む生産部門においても取得が進み、対象職域が拡大しています。
今後も、管理職への理解促進を含め、雇用形態や性別にかかわらず、全ての従業員が育児休業制度を活用できる環境整備と利用促進に取り組んでいきます。

働き方改革

不二製油(株)では、ダイバーシティの実現に不可欠な働き方改革を推進するため、2016年度に「Creative Workプロジェクト」を立ち上げました。生産性向上による総労働時間の削減とワーク・ライフ・バランスの向上を目指し、約5年間にわたり、意識改革・業務改革・制度改革・職場創生の4つの観点から取り組みを進めてきました。
これらの取り組みの一環として、2017年度以降は在宅勤務制度を拡充するとともに、テレワークの段階的な拡大やサテライトオフィスの導入、フルフレックスタイム制度の導入を進めています。併せて、RPAの導入や申請フローの電子化、オンライン会議の活用に加え、Microsoft Copilotなどのツールの活用を推進することで、時間や場所にとらわれずに成果を創出できる働き方の定着を図っています。

  • ※ RPA:Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)。

シニアの活躍

全ての従業員がいずれ当事者となるシニア層の潜在能力に着目し、当社グループではこれをDE&I推進の重要な柱の一つとして位置づけています。
2021年度には、多様なキャリア選択を可能とするため再雇用嘱託制度の見直しを行い、2025年度には一部改定を実施しました。併せて、新制度の考え方に基づき、数年後に定年を迎える従業員を対象としたキャリア教育の充実を図り、活きたキャリアの継続を支援しています。

非正規雇用の正規化

活躍の意欲にあふれる非正規雇用従業員を対象に、年1回、正社員登用試験を実施しています。2025年度には12名が合格しました。今後も本制度を通じて、能力と意欲のある人材の積極的な登用を図ります。

障がい者の活躍推進

社内ジョブコーチによる支援体制

不二製油(株)では、2026年4月1日時点で42名の障がい者が就業しており、障がい者実雇用率は2.66%と、法定雇用率を満たしています。これまで、地域の学校との連携や職場体験実習の実施に加え、2022年度からは長期就業を見据えた定期的な産業医面談の導入など、働きやすい職場環境の整備を進めてきました。
一方で、2024年度以降、精神障がい者の受け入れを拡大する中で、一人ひとりの個性に配慮しながら活躍の場を提供する、という全ての従業員に対する基本姿勢に立ち返るとともに、配属先職場における理解促進の必要性が明らかとなりました。
そこで2025年度より、社内ジョブコーチによる支援体制を構築し、外部農園で活躍するスタッフの長期就業支援や、事業所内における職域の拡大に取り組んでいます。

分身ロボットによる新たな働き方の実現

職域拡大の一環として、阪南事業所の受付業務に分身ロボットを試験導入しました。外出が困難な障がいのある方が、分身ロボットを通じて在宅で受付対応を行うことで、働く意欲や能力を活かせる環境の整備を進めています。
本取り組みにより、在宅勤務による新たな就業機会の創出につながっているほか、実際の運用においても、ジェスチャーを交えたコミュニケーションにより、来訪者への円滑な案内対応が実現されています。
今後も、さまざまな業務における障がい者雇用の可能性を検証していくことで、多様な働き方の実現に向けた取り組みを推進していきます。

阪南事業所にて受付業務を行う分身ロボット