DE&Iの推進
マテリアリティ
人的資本と労働安全
方針
不二製油グループは、2020年5月に「不二製油グループ ダイバーシティビジョン」を策定しました。また、不二製油においては、このビジョンに先駆けて、2015年度に「ダイバーシティ基本方針」を定めています。

不二製油グループ ダイバーシティビジョン(2020年5月策定)
ダイバーシティを楽しもう
世界の多様な人材がお互いに刺激しあい、イノベーションを起こしていく。この過程をお互いに楽しみながら、多様性に富んだ世界中の人々にさまざまな食のシーンを通じておいしさと健康をお届けできるよう「人のために働く」を実践し、社会へ貢献します。
ダイバーシティ推進における重要な領域
ダイバーシティビジョン策定に際して、ダイバーシティを推進する上での重要な領域として、性別、国籍、世代、専門性、経験を定めました。従業員一人ひとりのバックグラウンドや個性が活きる姿を目指し、制度や意識の改革に取り組みます。

不二製油ダイバーシティ基本方針
多様な人材を幅広く求め、それぞれが持てる能力を最大限に発揮できる風土を醸成することで、社会への新たな価値提供を加速していきます。
- 採用、育成、登用などの人材発掘の全段階において、人員構成の多様性を意識します。
- 多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるよう、柔軟性のある制度展開を行います。
- 多様な人材の戦略的な活用を意識し、社会および会社への利益貢献へとつなげます。
ガバナンスGRI:3-3
当社グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長兼CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1を設置しています。サステナビリティ委員会では、ESGマテリアリティ重点項目※2「DE&I」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、上席執行役員 最高財務責任者CFO兼人事総務本部長管掌のもと、取り組みを推進しています。
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※1 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>ガバナンス
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#governance
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※2 ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標>指標と目標
https://www.fujioil.co.jp/sustainability/sustainability_management/#index
推進体制

戦略
当社グループでは、「不二製油グループ憲法」のプリンシプル(行動原則)の中で「私たちは、不二製油グループ社員の多様性と人格、個性を尊重します。」と定めています。当社グループで働く仲間の基本的人権、多様性、人格、個性を尊重し、差別や嫌がらせのない「働きがい」のある職場環境づくりに努め、従業員の挑戦や成果に対しては適正かつ公正な評価を行う考え方を示しています。この考えに基づき策定した「不二製油グループ ダイバーシティビジョン」のもと、国籍やジェンダー、年齢などを問わず、ポストやプロジェクトなどの機会を広くオープンにし、実績や潜在能力を客観的に評価することで、多様な人材を活用していきます。また、近年働き方の選択肢が増え、会社への貢献の仕方も多様化する中で、全ての人が活躍できる環境や機会を提供するべく、不利な状況にある人が感じているバリアーを取り除くよう努めています。
グローバルに事業を展開する当社グループにとって、従業員の属性や価値観の多様性の尊重は重要な社会的責任です。また、「不二製油グループ憲法」の中で掲げるビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」の実現において重要な「技術の融合」や「顧客との課題解決」には、多様な従業員の力を統合し、組織の力に変えていくことが肝要です。DE&Iの観点での対応を怠った場合、離職者増による生産性低下、レピュテーションリスク増による投資家離れや顧客との取引停止などのビジネスリスク、また将来に向けた新たな価値創造力の喪失といったリスクが高まります。一方でこうした対応を進め、全社員の個性や能力を最大限に活かすことにより、当社グループの成長に向けた新たな価値創造につながる機会となり得ます。
これからも、従業員全員の声が価値をもたらし帰属意識が感じられる企業文化を醸成し、多様な人材のパワーを発揮させるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重視した経営を推進します。
リスク管理
不二製油グループは、以下のESGマテリアリティおよび全社重要リスクによって「人的資本と労働安全」に関するリスクや機会を管理しています。
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全社重要リスク
リスク分類「災害・事故」「環境・人権」「調達」「労務・人事」
従業員とのエンゲージメント
不二製油グループでは、2023年度にエンゲージメントサーベイの実施を開始しました。
不二製油の従業員に対しては、年2回、「働きがい」を測定する9つのキードライバーについて数値で見える化し、会社全体、また組織ごとの課題を抽出、評価しています。これまでの合計4回のサーベイを通して、当社としての強みは、「組織風土」の構成要素の一つである「部署間での協力」に代表される『人間関係』、および、「職務」の構成要素の一つである「裁量」のスコアの高さから『まかせる風土』であることが確認できました。これらは、新制度で掲げる「チームで成果を出す」「共創力」の基盤であり、「技術の融合」や「顧客との課題解決力」といった価値創造の源泉となる強みの風土であると考えています。一方で、全社的な課題と捉えたのは「理念戦略」のスコアが低位な点です。総合スコアは回を追うごとに改善していますが、この傾向は変化していません。
また、海外グループ会社の従業員に対しては、年1回、「HATARAKIGAI」を高めることを目的に、グローバルエンゲージメントサーベイを実施し、各社においてアクションプランを作成して改善を進めています。これまでの合計2回のサーベイを通して、「協働」や「チームワーク」などに強みがあることが示唆され、「チームで成果を出す」基盤があることが、日本も含め、当社グループ全体の強みであると捉えています。一方で、グループ全社のマネジメント層において、「個人を尊重して成長を支援する」といったいまの時代の新しいリーダーに求められる考え方やスキルの不足、また、ミッション・ビジョンや方針・戦略を語れるリーダーの不足が見受けられ、これは日本も含めたグループ全社の傾向です。リーダー育成により全社風土を変えていくことが当社グループ全体の大きな課題と捉えています。
これらの結果を受けて、課題である「個の尊重」がダイバーシティ推進と親和性が高いこと、経営方針や事業戦略への理解・納得感を深めることはインクルージョンにつながることから、DE&Iの推進と、「HATARAKIGAI」の向上の両施策を連動させ、課題の把握・アクション・改善の進捗確認のサイクルを回しながら推進しています。特に、ミッション・ビジョンへの共感や経営方針や事業戦略への理解・納得感を深めていくことは、経営が率先垂範で取り組むべき最重要課題と認識し、経営陣と従業員の直接対話の機会の創出などを行ってきました。次期中期経営計画においても、ESGマテリアリティにも掲げ、一層、取り組んでいきます。
従業員が不二製油グループの一員であることにより価値を見出し、誇りを持って働くことができ、個人とグループの双方が成長できる不二製油グループとなるよう、サーベイの結果を活用したDE&Iの推進、および、「HATARAKIGAI」の向上に一層注力していきます。
指標と目標
〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満
2024年度目標 | 2024年度実績 | 自己評価 |
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経営層における多様性の確保 | <グループ全体>
→主要因は東南アジアエリアでの登用。一番の課題は日本本社の意思決定層における多様性向上。 |
〇 |
トップマネジメントによる経営方針や従業員への期待に関するメッセージ発信 | <グループ全体>
|
〇 |
<旧不二製油(株)>
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〇 | |
<ブラマー チョコレート カンパニー(米国)>
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〇 | |
<中国エリア>
|
〇 | |
マイノリティグループの尊重と誰もが働きやすい職場づくり | <不二製油>
|
〇 |
障がい者雇用における法定雇用率(1.85%)は未達成 | △ | |
→2025年4月から国内の事業所敷地内および就業時間内を全面禁煙とするなど取り組みを進めたが、ホワイト500は取得できず |
× | |
<ハラルド(ブラジル)>
|
〇 | |
<フジ ベジタブルオイル(米国)>
|
△ | |
公正な職場づくりのための評価制度の改善および管理職への浸透促進 |
<中国エリア> 公正な職場づくりのための評価制度の改善と管理職への浸透。 KPI:評価シートとフローの改善 |
〇 |
<東南アジアエリア> 現地駐在員のキャリア開発 KPI:派遣体制の完成度 |
〇 | |
<欧州エリア> 苦情処理制度などの浸透を目的とした従業員ハンドブックを作成し、全社員への配付、署名、活用 KPI:従業員への浸透度 |
〇 |
考察
2022年度より、エリア・個社ごとにDE&I推進責任者をアサインし、各エリア・個社主体のDE&I活動推進によりグループとしてのビジネスリスクの軽減と新たな価値創造によるリターン向上を目指してきました。歴史的背景やビジネス特性などが多様であるため、グループ全体で一律の目標を設けることはせず、2024年度からは前年度に実施したエンゲージメントサーベイの結果を踏まえて、エリア・個社ごとに目標設定を行い、活動を推進しました。
社会からの評価
2025年6月時点までの、ダイバーシティに関連する主な外部評価は以下のとおりです。
不二製油(株)
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2017年8月
厚生労働省「プラチナくるみん」認定
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2022年11月
大阪市女性活躍リーディングカンパニー認証 継続取得
ハラルド(ブラジル)
Great Place To Work(GPTW)働きがいのある会社ランキングにおいて、以下の2つの認定取得。
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2025年3月
Great Place To Workの認定(8年連続)
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2025年5月
ブラジル農業関連企業における働きがいのある中規模企業トップ20
また、2025年5月に、Great People Mental Healthによる the Mental Health awardの認定取得。
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(関連情報) 社会からの評価
Next Step
事業持株会社制への移行に伴い、2025年度からの新中期経営計画期間中の重要経営方針として全社一体化(経営統合した不二製油グループ本社と不二製油(株)の一体化および日本と海外グループ会社の連携強化)を掲げています。一体化の旗頭として、DE&Iの推進、「HATARAKIGAI」の向上を掲げ、以下の施策に取り組み、結果指標としてのKPIの達成を目指します。
グループ全体
- 意思決定層における多様性の確保
- DE&I方針の策定、浸透
- エンゲージメントクロスボーダーチームの組成、チームによる従業員のエンゲージメント向上を図る施策の実施
日本
- 多様な働き方の促進
- 障がい者の長期活躍の支援
具体的な取り組み
不二製油における取り組みGRI:404-2
活きたキャリアの継続を目指して
シニアの活躍
全ての従業員がいずれは当事者となるシニア層の潜在能力を引き出すことに注目し、今期のDE&I推進の主要な柱の一つとして位置づけています。2021年度には多様な選択が行えるよう再雇用嘱託制度の見直しを行い、2022年度4月より施行しています。また、新制度の考え方に基づき、数年後に60歳定年を迎える予定の従業員を対象としたキャリア教育をさらに充実させることで、活きたキャリアの継続を実現していきます。
ライフイベントを乗り越える
不二製油では、1992年の育児休業法の施行をきっかけとして、育児休業を活用する女性従業員が増えてきました。一方で、育休後のキャリア形成という面では課題もありました。そこで2014年度以降は支援のあり方を大きく方向転換し、それまでの雇用の継続を意識した制度に加え、ライフイベントを乗り越えてキャリアを積極的に構築していこうとする層をサポートする、さまざまな制度を取り入れています。
2014年度から上司・配偶者・男女の育児勤務者の三者による面談を開始したことがきっかけで、育児勤務者を取り巻く家庭・職場での支援の輪の形成や、育児勤務者自身の意識の変革が進展してきています。現在は、以下にてフォロー体制を整備しています。
<妊娠>
- 妊娠期間中の体調不良など相談窓口
- 育休前面談
<産育休>
- 賞与保証(20%)
- 育児休業(子が2歳になった後の最初の4月末まで取得可能)
- 育児コンシェルジュサービスによる復帰支援
- 通信教育利用補助の継続
<復帰後>
- 小学校1年以下の子を養育する従業員対象の育児のための短時間勤務制度の整備
- ベビーシッター利用補助
- テレワーク制度、コアタイムなしのフレックス制度の活用
加えて、男性の育児参加を促すために、配偶者の出産があった男性従業員に対して、男性向けの育児休業制度の説明資料を配付し取得促進に努めています。その結果、2024年度は男性の育児休業取得率が67.5%(平均取得日数は29日)となりました。また、近年では長期取得も増え、2024年度においては27名中13名が1ヵ月以上取得しています。管理職に制度への理解を促し、雇用形態や性別を問わず、従業員誰もが育児休業を取得できるよう利用を一層奨励するとともに、環境整備に努めます。
多様な人材の活用推進
女性の活躍推進
1999年度に不二製油トップ方針として女性活躍推進が打ち出され、女性活躍推進委員会を立ち上げて本格的な取り組みを開始しました。2025年3月末時点で、旧不二製油(株)および旧不二製油グループ本社の管理職に占める女性の比率は15.9%です。今後、採用・育成における機会の均等をさらに重視する必要があると認識しています。
2016年度より、内閣府の「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言に、旧不二製油グループ本社のCEOが賛同しており、従業員ならびに社会に対して、経営におけるダイバーシティの重要性を発信しています。

障がい者の活躍推進
不二製油(株)では、2025年4月1日時点で29名の障がい者の方が就業していますが、法定雇用率を充足するまでには至っていません。これまで、障がい者雇用の取り組みとして地域の学校との連携や、職場体験実習の実施、先進企業との情報交換を通して体制を整え、2015年度からは多くの職場で活躍できるよう職場開拓に注力してきました。2022年度からは長期就業を念頭に、産業医面談も定期的に開催し、働きやすい職場環境の整備にも努めています。一人ひとりの個性に配慮しながら活躍の場を提供する、という基本姿勢に立ち返ることで、育成にあたる管理職の意識改革にもつながっています。
これまでの取り組みから、健常者主体の職場が、必ずしも全ての障がい者の働きやすい職場になるとは限らないと考え、2024年度からは外部農園での障がい者採用を開始しました。開放的な農園で農作業に従事することで、長期就業できる環境を整備し、多くの障がい者の活躍推進につなげていきます。
非正規雇用の正規化
活躍の意欲にあふれる非正規雇用社員を対象に、年1回、正社員登用試験を実施しています。2024年度には13名が合格しました。今後も本制度を通じて、能力と意欲のある人材の積極的な登用を図ります。
働き方改革
不二製油では、ダイバーシティの実現に欠かせない働き方改革を推進するため、2016年度に「Creative Workプロジェクト」を立ち上げました。生産性の向上による総労働時間の削減およびワーク・ライフ・バランスの向上を目指し、2022年4月までの約5年間で、意識改革、業務改革、制度改革、職場創生の4つの改革に取り組みました。
改革の一環として、2017年度からは在宅勤務制度をさらに発展させるべく、段階的にテレワークを拡大、サテライトオフィスの導入も行い、現在も新たなワークスタイルを検討しています。併せて、RPA※の導入、申請フローの電子化、オンライン会議システムの積極利用により、コミュニケーションの活性化、ペーパーレス化も推進しています。2024年度は全直接雇用者の約4割が本制度を利用しました。
ITを活用して、時間や場所にとらわれずに成果を発揮できる仕組みをさらに定着させていきます。
- ※ RPA:Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)
グローバルな取り組み
地域性や個社の歴史的背景、ビジネス特性などが多様であるため、2022年度より、エリア・個社ごとにDE&I推進責任者をアサインし、課題の抽出、課題解決に向けての目標設定や施策の検討を行い、サステナビリティ委員会で審議・モニタリングを行うプロセスを確立しています。当社グループ全体としての一律の目標は設けず、「不二製油グループ憲法」の精神のもと、各エリア・個社がDE&I活動を推進していくことにより、グループ全体のDE&I経営の強化を図ってきました。
また、2023年度から開始した従業員エンゲージメントサーベイについて、2024年度には、エンゲージメントサイクルの実効性向上のため、各エリア・個社別の結果説明会への経営層の参加を促し、各社内でのサーベイ結果共有、アクションプランの作成(サーベイ結果から各社の強みと課題を抽出し、改善策を立案)、プラン実行の一連の流れを本社人事がモニタリングする体制を開始しました。2025年度以降は、エンゲージメントクロスボーダーチームを組成し、さらにサーベイの結果を活用したDE&Iの推進および「HATARAKIGAI」の向上に一層注力してまいります。