CEOメッセージGRI:2-22
原点から未来へ ─ おいしさ・健康・サステナブルで挑む課題解決型ものづくり

2025年4月、不二製油グループ本社と不二製油は合併し、新たな「不二製油」として事業持株会社制へ移行しました。2015年の純粋持株会社制への移行後、事業運営の現地化と海外での事業展開を加速させてきましたが、コロナ禍以降、世界経済の変化や地政学リスクの拡大により、環境・社会課題がますます顕在化しています。事業環境の変化により一層迅速に対応するため、エリア軸から事業軸へ転換し事業体制を強化しました。植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の各事業本部によるグローバルなマネジメントにより、人材をはじめとする経営資源の最適配分を行い、事業戦略の実行スピードをあげていきます。
不二製油は、創業当初から南方系油脂と大豆たん白を中核に植物性素材にこだわり、“人まねはしない”という信念のもと、挑戦と技術革新を重ね事業を発展させてきました。その歴史の中で培った各事業固有の技術の融合により安全で安心な機能性の高い食品素材を創出し、社会やお客様の困りごとを解決していく“課題解決型ビジネス”をグローバルで展開しています。お客様や社会の困りごとに真摯に向き合う姿勢はまさに当社のDNAであり、その解決への貢献こそが持続的な収益の源泉と考えています。こうした事業を通じた価値提供を実現するためには、バリューチェーン全体における社会や環境影響への対応が持続可能な事業運営に不可欠であることを認識しています。特に主原料のサステナブル調達にいち早く取り組んできました。異常気象の頻発・激甚化により原料供給が不安定化する中、従来のサステナブル調達活動を推進するとともに、プロバンス・ユイルの取得やJohor Plantationsとの合弁会社設立により、高品質でトレーサブルな油脂原料を確保し、サプライチェーンの強化を図っています。さらに、カカオ原料を使用しないチョコレート開発や油脂酵母によるパーム油代替油脂などサステナブルな食資源の研究開発の側面からもアプローチしています。こうした取り組みにより、原料産地における自然や人権に関わるリスクを低減するとともに、将来のニーズに応える持続可能な機会の創出につなげています。
中長期的な視点で見ると、社会は複合的な課題に直面しています。気候変動や生物多様性喪失といった自然リスクの増大、人口増加に伴う食料問題や経済格差など社会課題は一層複雑化しています。加えて価値観の多様化も進む中、心身の健康を支える食のあり方そのものが問われています。こうした中、次なる成長ステージに向けて、「おいしさ」「健康」「サステナブル」をキーワードに、人と地球の課題解決に向けた中長期的な視座に基づく取り組みを加速させています。具体的には、動物性原料に代わる代替脂や、独自の抗酸化技術を応用した健康油脂、おいしさを進化させた大豆たん白素材など、持続可能な食資源の開発と普及に取り組んでいます。さらに、植物性油脂と植物性たん白の研究開発に基づいたMIRACOREⓇ※を活用した製品をはじめ、「おいしい」の多様な選択肢を提供し、新たな市場に注力しています。
こうした課題解決型ビジネスをグローバルに展開していくためには、柔軟かつ新しい発想で現地のライフスタイルに寄り添い、地球を含む多様なステークホルダーへの配慮を前提とした包括的なアプローチが不可欠です。その原動力は世界15ヵ国で活躍する当社グループの従業員です。一人ひとりが革新を生み出す創造力の源泉であり、グローバルに活躍できる人材の育成と、多様な能力やバックグラウンドを持つ人材が力を発揮できる、安全で安心な職場環境および成長機会の提供に力を注いでいます。
「おいしさ」「健康」「サステナブル」を柱に、不二製油メンバーが一体となって、社会やお客様の課題解決に挑み、ものづくり企業としてバリューチェーン全体で価値共創を進め、サステナブルな食の未来をともに築いてまいります。
不二製油株式会社
代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)
サステナビリティ委員会 委員長
- ※ MIRACOREⓇ: 不二製油グループが開発した動物性食品ならではのおいしさを植物性素材で実現する技術