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CEOメッセージ

課題解決を原動力に、不二製油グループのさらなる成長へ 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO) 大森 達司課題解決を原動力に、不二製油グループのさらなる成長へ 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO) 大森 達司

2025年4月、不二製油グループ本社と不二製油株式会社は統合し、新たな「不二製油株式会社」として歩みを始めました。
この統合は、急速に変化する事業環境の中で、グローバル戦略をより力強く推進するための重要な転換点です。海外拠点含めたグループ全社一体となった経営がこれからの成長の鍵を握ります。
新 不二製油は人材をはじめとする経営資源の一元的な管理、配分の最適化を図り、より迅速かつ柔軟に経営課題への対応を進めます。加えて、高収益な事業ポートフォリオへの転換を加速させ、持続可能な成長を目指します。

「PDCAを速く回し、意思決定のスピードを上げる。」

社長就任にあたり、グループ従業員へ伝えた言葉です。現在の問題点を見える化して、施策を計画し、実行、その結果を確認し、次の改善につなげる――このサイクルを高速で回すことができる企業こそが成長できると私は考えています。私はこの考えのもと、2017年より不二製油の日本エリアの代表として、コア製品群の強化と新たな市場・新たな売り方への挑戦を推進してきました。その結果、日本エリアの業績は大きく伸長し、一定の成果を残すことができました。これは、日本エリアの全従業員が常にPDCAを回したことによる成果であり、大変感謝しています。

不二製油グループは、植物性素材を通じて人と地球の課題解決に貢献できる企業です。私たちが社会に対して果たせる役割は、今後ますます大きくなります。だからこそ、私は業績低迷が続くブラマーに対して、不二製油らしい方法で立て直しを図り、将来の不二製油グループを牽引する新たな事業の柱を育てていきます。

最優先課題として、ブラマーの立て直しを図る

2019年に買収したブラマーは、工場の老朽化やコロナ禍の影響により、業績の低迷が続いており、それを打破すべく2024年には構造改革を発表しました。施策は想定どおり進捗していたものの、同年初頭からのカカオ価格高騰により新たな課題が発生し、2024年度の業績に大きな影響を及ぼしました。私は、この不振の本質は、ブラマーのガバナンスの脆弱さにあると捉えています。環境変化に対する機敏な対応や、業績要因分析による素早いPDCAを行えなかったことが、対策の遅れにつながる悪循環を生んでしまったと考えています。こうした状況を改善すべく、統一基幹システムの導入や日本からも追加で人員を派遣し、早期の実態把握と対応を進め、ブラマーのガバナンス強化を進めてまいります。

2024年度の業務用チョコレート事業は、ブラマーのカカオ特殊要因による305億円の営業損失を受け、大きな赤字を計上いたしました。ブラマーの業績改善は、当社グループ全体にとって喫緊の課題であり、私たちはこのブラマーの再建に強い覚悟を持って取り組んでいます。不退転の決意で改革に臨みます。

常に新興勢力として、スピード感溢れる挑戦こそが不二製油

不二製油グループは、チョコレート用油脂(CBE)で国内トップ、世界でもトップ3のシェアを持ち、コンパウンドチョコレートや、業務用ホイップクリームなどの分野でも高い競争力を有しています。これらの根幹にあるのが、創業以来培ってきた油脂技術です。

当社は1950年の創業以来、油脂を核として成長を続けてきました。原料が国から割り当てされていた時代、後発メーカーであった当社は、思うように原料を仕入れることができませんでした。そのような制約の中、試行錯誤の末に東南アジアで生育されるココナッツオイルにたどり着きました。日本で初めて、ヤシの実から搾油する技術を確立し、南方系油脂を原料とした油脂製品を競争力の源泉へと転換したことが、当社の「挑戦者」としての原点です。

その後も、油脂を基軸にチョコレート、ホイップクリーム、マーガリンなどの分野へと事業領域を拡大し、さらに大豆の食物繊維を原料とした水溶性大豆多糖類や大豆から豆乳クリームと低脂肪豆乳に分離する世界初の技術USS(Ultra Soy Separation)といった新技術の開発にも取り組み、収益の柱へと育ててきました。特に水溶性大豆多糖類は、当時世界で誰も成し得なかった技術であり、私たちが市場を切り拓いた象徴的な成功例です。こうした経験に裏打ちされた「挑戦しなければ生き残れない」という精神は、現在も当社のDNAとして深く根付いています。

冒頭で触れたブラマーが直面する課題は、まさにその挑戦者精神が求められる領域です。当社グループの強みである油脂技術を活用したコンパウンドチョコレートを米国に展開することこそが、ブラマーの成長戦略であり、ひいてはグローバル全体の競争力強化につながると考えています。そのためには、これまで私たちが日本において培ってきた、メーカーの基本である効率的な生産体制や、安定した品質の製品を供給する生産技術、原材料の購買、生産コストや販売価格の一元管理体制が求められています。

挑戦を続けていく上で、最も重視しているのはスピード感です。私はこれまで日本の代表として、「サーキット活動」と銘打って、PDCAをスピーディーに回す体制づくりを社内で推進してきました。この活動の原点には、かつて不二製油が実践していたQR(クイックレスポンス)活動があります。お客様の要望にいち早く対応し、提案書やサンプルの提供、クレーム報告などの迅速な対応を徹底してきたこの文化は、今なお当社グループの開発力や柔軟な顧客対応力の根幹を成すものとなっています。こうした強みを活かし、コア事業である成長領域ではスピードと効率を追求して収益性を高め、盤石な事業基盤を築いた上で、新たな挑戦領域へと果敢に踏み出す。これこそが、不二製油グループの持続的成長を実現するための姿です。

課題に挑み、価値を創る

不二製油の原点は「挑戦」ですが、私たちが挑むべき対象は「課題解決」だと考えています。当社グループの強みは、課題を見つけ出す力、その課題解決に向けた部門を越えた連携、その結果として生まれる製品にあります。これまで私たちは、お客様の抱える課題、例えば、顧客が求める「アイスクリームに最適なくちどけのチョコレート」、顧客の製造ラインに適した「使用しやすく安定した品質の製品」といった明確な要望から、消費者にとっての便益につながる潜在的ニーズまで、生産・開発・販売が知恵を出し合い、製品という形で応えてきました。かつては顧客や消費者の課題が中心でしたが、今では原料の産地が抱える課題、地球規模の課題、地域・社会が抱える課題など、多様なステークホルダーが抱える課題に向き合っています。課題解決こそが私たちのビジネスの本質であり、その貢献度が企業としての成長と収益につながっていると私は確信しています。

不二製油グループは、メーカーです。事業持株会社制への移行を機に改めてグループ全体でメーカー意識を共有し、ものづくりを通じて、社会に貢献することを徹底してまいります。不二製油グループをさらなる成長軌道に乗せるためにも、この「課題解決型ビジネス」の考え方を国内外に改めて浸透させ、不二製油らしい価値創造を推進していきます。

事業環境、取り組むべき課題を踏まえた組織の最適化

不二製油グループは、2015年にグループ本社制へと組織を変え、日本、米州、東南アジア、中国、欧州の5つに分けたエリア制を導入することでグローバル経営管理の高度化を進めてきました。その後、より事業部門の強みを発揮すべく、2022年度からはエリア軸と事業部門軸を掛け合わせたマトリクス型の経営管理体制に移行し、エリアと事業領域という複眼的管理を通じて、サプライチェーンを含めた事業ポートフォリオの最適化や、事業部門を飛び越えた連携を強化してきました。その一方で、ウクライナ情勢の緊迫化によるサプライチェーンの分断や、パーム油やカカオなどの主要原料の価格高騰といった外部環境の変化に対しては、グループ本社制では、スムーズな情報共有や意思決定のスピードに限界があり、初動対応が遅れる場面もありました。また、従業員にとってもグループ全体の目標と各エリアの目標とのつながりが見えづらく、方向性の共有が課題となるケースもありました。

こうした課題を踏まえ、グループ本社制のもとで拡大した海外事業をグループの成長へつなげるためには、経営資源の一元管理、最適配分が必要と判断し、経営会議、取締役会での数々の議論を経て、2025年4月より「事業持株会社制」へ体制を刷新しました。事業軸を中核に据えた運営体制とし、各事業本部には執行役員である本部長を1名ずつ、計4名配置し、明確なリーダーシップのもとで指揮を執る仕組みを構築いたしました。本部長には、当社グループとして目指すゴールを共有した上で、各事業の意思決定と実行を委ねています。この新体制により、現場に対してもシンプルでわかりやすい指揮命令系統が実現され、危機意識や課題認識の好循環が生みだされます。課題に対して、事業本部がベクトルを合わせ、ダイレクトに対応することで、戦略の実行スピードを大きく高めています。

2025年度 体制(イメージ)

「成長領域」の強化による競争優位の確立と、「挑戦領域」での新たな価値の創出

新中期経営計画では、「ガバナンスの深化」に加え、「成長領域のさらなる強化」と「新たな挑戦領域の確立」を方針として掲げ、各事業や研究開発、安全品質・生産技術、人事などの各本部に方針を落とし込み、グループ全体で実行しています。

「成長領域」においては、チョコレート用油脂(CBE)やコンパウンドチョコレートなど、高い市場シェアを誇る製品群が当社グループの成長を牽引しています。しかし、こうした領域は、当然ながら他社との競争があり、持続的な成長のためには圧倒的な競争優位性の確立が不可欠です。これまで当社は、お客様の多様なニーズに応える製品展開によって成長してきましたが、これからは必要に応じて製品群を集約することで、生産効率を高め、生産現場の合理化、価格競争力の強化を図ってまいります。また、気候変動や地政学リスクなど外部環境の不確実性が高まる中、植物性油脂事業を中心に、上流のサプライチェーン強化にも注力しています。これは、安定供給の確保にとどまらず、当社グループの競争力を支える重要な基盤となっています。

「挑戦領域」は、当社グループが中長期にわたって成長していくための原動力です。何も新商品や新技術ばかりが挑戦領域になるのではありません。既存の技術や製品を新たな市場や用途に展開し、お客様の課題解決につなげることも挑戦の一つです。従業員一人ひとりが、どの分野に挑戦する意義があるのか、どのような付加価値を提供できるのかを考えながら、新たな可能性を模索していくことが重要です。研究開発や販売だけではなく、関係するすべての従業員が、実際の売り場を見て、商品ラインナップや販売価格、購買層などをより深く観察することから課題は見えてくるはずです。

一方で、課題解決型の商品として価値を発揮していたものであっても、環境の変化や時代の流れによって付加価値が低下していくことは避けて通れません。こうした場合は、しっかりと効率性を重視して、製品ポートフォリオにおける位置づけを分析した上で、スピードを意識して製品群の見直しなどの判断も行っていきます。

サステナブル調達が生むバリューチェーン全体の成長

当社グループは、上流のサプライチェーンにおける課題に向き合い、その解決に取り組んでいます。これにより、当社にとって安定的な原料調達が可能となるだけでなく、バリューチェーン全体の経済価値、環境・社会価値の向上にも貢献し、持続的な成長につなげています。

パーム油、カカオ豆、大豆、シアカーネルの4原料について調達方針を定め、原料の生産地における児童労働、貧困、自然破壊といった課題に対して、具体的なアクションを展開しています。例えば、ガーナでは、女性協同組合とともにシアカーネルのサステナビリティプログラムを推進しています。このプログラムでは植樹による緑地保全に加えて、組合員へのビジネススキルや品質管理などのトレーニングの提供や、シアカーネル保管用倉庫の整備など、現地の生活環境や就業環境の改善にも取り組んでいます。こうした活動は、単なるCSRではなく、当社の製品を選んでくださるお客様がその意義を理解し、共感してくださることで、バリューチェーン全体の価値創出へとつながっています。

さらに、2025年4月にグループに加わったひまわり油を扱うプロヴァンス ユイルや2026年度稼働予定のパーム油を扱う合弁会社JPG フジといった植物性油脂事業のグループ会社を通じて、サステナブルな原料の安定調達体制も強化しています。これらの取り組みは、当社の既存事業の基盤を支えるものでもあり、今後も積極的に推進していきます。

ステークホルダーの皆様へ

ステークホルダー、特に投資家の皆様との対話において、ブラマーの業績について厳しいご意見をいただいています。ブラマーの苦戦によって全体の実績に足踏みが生じている点については、真摯に反省すべきだと認識しています。ブラマーを早期に立て直し、当社が持つチョコレート用油脂(CBE)やコンパウンドチョコレートにおける強みを最大限発揮し、強固な収益基盤を構築してまいります。

世界の食を取り巻く環境は、人口の増加や環境問題、食資源の不足などといった課題に直面しています。こうした中、不二製油グループは、植物性素材の可能性を追求することで、サステナブルな食の未来を切り拓くことができると、私は信じています。そしてその信念を、言葉ではなく「実績」で示していきます。今後も、すべてのステークホルダーの皆様と誠実に向き合いながら、持続的な成長と価値創造を実現してまいります。