FST技術～DHAの新たな可能性を拓く革新的抗酸化技術～
近年、健康志向の高まりに伴い、健康効果が期待できる油脂への関心が高まっています。特にオメガ3系脂肪酸の一つであるDHAは、青魚などに豊富に含まれる重要な栄養素であり、脳機能の向上や血中コレステロールの低下など、さまざまな健康効果が報告されています。
しかし、DHAは人間の体内でほとんど合成されないため、食事やサプリメントとして継続的に摂取することが推奨されています。一方で、DHAは油脂の中でも特に酸化劣化しやすく、加熱や長期保管によって強い魚臭が発生するため、食品や飲料への配合が困難という課題がありました。従来の油溶性酸化防止剤ではこの問題を十分に解決できず、今後も漁獲量の減少や食生活の変化によりDHA摂取量が不足することが予測されています。
こうした背景から、より幅広い食品や飲料でDHAを摂取できるようにするためには、従来以上の抗酸化技術が必要であると考えました。そこで当社は、これまで培ってきた分散技術を活用し、新たな抗酸化技術「FST」の開発に着手しました。
油脂の酸化を防ぐ革新的分散技術『FST』
FST（Fuji Stabilization Technology）は、油脂中に難溶な抗酸化成分を目に見えないほど微細に分散させる、当社独自の抗酸化技術です（図1）。この技術により、従来の油溶性酸化防止剤では実現できなかった高い抗酸化機能を油脂に付与することが可能となりました。
具体的には、DHAとFST技術を組み合わせることで、酸化劣化しにくい安定化DHA含有油脂素材「プロレア®」の開発に成功しています。
プロレア®は市販DHA油と比較した加熱劣化試験において、臭気成分の発生を大幅に抑制できることが確認されています（図2）。
この技術によって、DHAなどの栄養健康油脂を幅広い食品で美味しく、かつ手軽に摂取できるようになり、2022年には日本農芸化学技術賞を受賞しました。
（図1）
（図2）
※1: プロパナール：油脂の二次酸化物であり、酸化劣化指標となるプロレア®の酸化安定性を評価するため、市販魚油とプロレア®の加熱劣化加速試験（60℃、遮光、120時間保存）を実施し、臭気成分物質の分析を行った。
食卓に広がる健康と安心―新技術がもたらす未来
FST技術の確立によって開発されたプロレア®は、美味しさと健康を両立させた商品開発に貢献できる新しい素材です。
これまでに焼き菓子やパン、チーズなど多様な食品に採用されており、従来は魚やサプリメントが主なDHA摂取手段だった中で、消費者の選択肢を大きく広げることができました。当社系列の通販会社であるソヤファームクラブでは、プロレア®を配合した「かけるDHA MOIL」を販売しており、子どもから高齢者まで幅広い世代が美味しくDHAを摂取できる商品として好評を得ています（図3）。
さらに、最近ではFST技術を応用した「抗酸化油H」の販売も開始し、油脂はもちろん、レトルト食品や冷凍食品の劣化臭抑制にも効果が確認されています（図4）。これらの技術は、油脂を含む食品・飲料の日持ち向上ソリューションとしても紹介しており、今後も持続可能な社会の実現に向けて、FST技術のさらなる応用と展開を目指しています。
（図3）
（図4）
