統合報告書
CEOメッセージ
Question 1不二製油グループの中長期的な成長の方向性を、CEOとしてどのように描くか?
4事業それぞれの強みを掛け合わせ、社会・顧客の課題解決を通じて成長していきます。
「なぜ不二製油は、4事業を持っているのか。」ーこれは、私が投資家の皆様と対話する中で、繰り返し受けてきた質問です。足元では植物性油脂事業が好調であるだけに、油脂に集中した方がよいのではないか、と思われた投資家からの率直な疑問だと思います。ですが私は、不二製油グループの強みは4事業を持っていることそのものにあると考えています。植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材という4つの事業があるからこそ、お客様や社会の課題に対して、より深く、より広く応えることができます。
今、食を取り巻く課題は一つではありません。2024年のカカオショックでは、それまで当たり前に手に入ると考えられていた原料が、必ずしもそうではないことを多くの方が強く意識されたのではないでしょうか。原料価格の変動、気候変動、人口増加、健康意識の高まりなど、課題は複雑に重なり合っています。こうした時代に求められるのは、単一の素材を提供することではなく、味、機能、作業性、安定供給まで含めた価値を提供することです。
例えば、お客様から「油脂もたん白も両方あるから相談できる」と言っていただくことがあります。これは当社グループの強みを端的に表した言葉だと思っています。ただ実際には、それだけではありません。油脂とチョコレートの組み合わせ、油脂と乳化と大豆の組み合わせなど、4事業があるからこそ、お客様の製品設計や製造工程にまで踏み込んだ提案が可能になるのです。当社グループの競争力の本質は、個別事業の強さだけではなく、それらをつないで価値に変える力にあります。足元でも、その力は表れています。カカオ相場が高騰した局面で、コンパウンドチョコレートの価値が改めて見直されました。単なるピュアチョコレートの代替ではなく、品質や作業性を維持しながら、原料環境の変化に対応でき、さらに機能面でも価値を発揮しています。
サステナビリティについても、特別なことをやっているわけではありません。私たちは以前から、限られた資源をどう価値に変えるかを考えてきました。「原料を無駄なく活かし、用途を広げ、機能を引き出す」ー当社グループの主要原料であるパーム油も、そうした考え方を象徴する原料の一つです。パーム油は融点の高い油と低い油に分けることができ、融点の高い油はチョコレート用油脂に使用します。では、低い油はどうするのか。単なる副産物として安価で販売するのではなく、どのようにして価値を高められるかを考えてきました。大豆も同様です。油を搾り切った後に残る大豆たん白に、新たな価値を見いだしてきました。いわゆるアップサイクルの考え方ですが、これはもともと当社のDNAに根差したものです。資源が限られる時代だからこそ、この考え方は私たちの確かな強みになっています。
私が経営で重視しているのは、課題を見つけ、それを技術と事業の力で顧客に選ばれる価値へと変え、持続的な成長につなげていくことです。課題解決はコストではありません。課題解決こそが成長の源泉であり、当社グループの成長を支える根幹です。4事業の力を活かし、この循環をさらに強くしていきます。
Question 2社長就任から1年を振り返っての成果は? また、中期経営計画最終年度の目標に到達できるか?
事業持株会社制への移行を通じて、経営スピードとグローバル管理の強化が進み、中期経営計画目標達成に向けた手ごたえを感じています。
2025年度は事業利益360億円と過去最高益を達成しました。ブラマーなど優先して取り組むべきテーマは残っていますが、この1年で実行した施策は着実に成果につながっており、経営としての手ごたえを感じています。2026年度は事業利益375億円を計画していますが、これを着実なステップとして積み上げながら、中期経営計画で掲げる2027年度事業利益450億円の達成を目指します。
その推進を後押ししているのが、事業持株会社制への移行です。事業ごとの責任と権限を明確にし、意思決定を速め、グローバルで成果を出すための経営基盤を整えました。個社ごとの最適ではなく、事業本部としてグループ全体の成果を最大化する視点でマネジメントできるようになったことは大きな変化です。2025年度、需要の高まるチョコレート用油脂(CBE)についても、グローバルに拠点を持つグループ会社間で中間素材を融通し、さらに生産改善につながる好事例を共有し合うことで、大きな投資に頼ることなく生産数量を伸ばすことができました。
また、各事業本部が事業を軸に、意思決定から実行までを主体的に担う一方で、安全品質、経理、人事などの機能本部が全社横断で事業本部を支える体制となっています。これにより、これまで調整に時間を要していた案件も、方針決定から現場への落とし込みまでのスピードが大きく上がっています。例えば海外の事案に対しても、事業本部と機能本部が連携し、必要な人材を速やかに派遣して、原因把握から対策、再発防止までを一体で進める体制が整いつつあります。
グローバル管理の強化に向けては、日本から海外拠点への人材派遣に加え、海外拠点の人材を日本へ受入れ、工場運営や効率化の考え方を学ぶ人材交流プログラムの検討も進めています。阪南スタイル※とも言うべき日本の製造現場の強みを共有し、一つの事業や拠点で得られた改善成果を他の地域にも広げていくことで、グループ全体の底上げにつなげていきます。私は、こうした横展開がグローバル経営を一段強くすると考えています。
※ 4事業が集積する阪南事業所で磨いた品質・生産技術・現場運営の知見・ノウハウ
中期経営計画の目標達成に向けた要は、コンパウンドチョコレートの拡販です。植物性油脂事業と業務用チョコレート事業の連携をさらに深め、機能性に優れた油脂を起点として開発したコンパウンドチョコレートの提案を広げていきます。2025年度より各エリアでの増産投資を進めており、今後の販売数量拡大につなげていきます。研究開発、調達、生産、販売がグローバルで一体となって提案スピードを上げ、供給の確実性を高めることで、2026年度の計画を着実に積み上げ、2027年度の目標達成をより確かなものにしていきます。

Question 3ブラマーの構造改革の現在地は?
メーカーとしての事業基盤を固め、2026年度の大きな成長につなげていきます。
2024年にブラマーの構造改革案を公表し、シカゴ工場の閉鎖を含む施策は着実に前進。ブラマーは今、成長戦略を実行できる段階へ移っています。その成長戦略の実行を支えているのが、メーカーとして必要な事業基盤の整備です。2025年7月より基幹システムの適用領域を拡大し、在庫や収益の状況を日々把握できるようにしました。当初は現場での運用に時間を要しましたが、トレーニングを重ねることで、以前より確度の高い見通しを立てられる状況へと変わってきました。何がどこで起きているのかを正確につかみ、必要な手を素早く打てる体制が整ってきたことは、大きな前進です。
こうした管理面の強化に加え、生産性の改善や予防保全も進めています。設備を効率的かつ安定稼働させることは、生産計画の精度を高め、ひいては事業全体の見通しを良くすることにつながります。2026年度も日本から専門人材を派遣し、現地スタッフが自律的に運営できる仕組みづくりを進めています。
そのうえで、ブラマーには北米における成長の担い手としての役割を期待しています。不二製油グループの業務用チョコレート事業の強みは、コンパウンドチョコレートにあります。今後は、下期より稼働予定のキャンベルフォード工場(カナダ)での能力増強を追い風に、不二製油グループだからこそできる課題解決型の製品群を北米市場で本格的に展開していきます。原料環境が大きく変化する中でも、品質や作業性、安定供給といった価値を提供することで、お客様の課題解決に貢献していきます。ブラマーが持つ北米での顧客基盤と、当社グループが培ってきた油脂・チョコレートの技術を掛け合わせることで、これまでにない提案の幅が生まれます。私は、ここにブラマーの成長余地があると見ています。事業基盤の整備を進めることで、2026年度はこれまでの取り組みをさらに前進させ、ブラマーを北米事業の重要な柱へと育てていきます。
Question 4挑戦領域の進捗はどうか?
2025年度は挑戦領域の製品群拡充を進めた1年でした。生まれた「芽」を、次の事業の柱へと育てていきます。
2025年度は、挑戦領域において将来の柱になり得る製品群の拡充を進めた1年でした。植物性油脂事業では新ブランドのMelavio®を立ち上げ、植物由来でありながらコクやジューシーさを付与できる点が評価され、採用が進んでいます。乳化・発酵素材事業では、独自の発酵技術を活用したチーズフィリングなど、不二製油グループならではの差別化製品の上市を進めました。大豆加工素材事業でも、顧客の作業改善に寄与するソヤセルを中心に、新しい機能素材が育ってきています。こうして各事業で、将来につながる芽が確実に見えはじめています。
次のテーマは、このような芽をどう広げ、事業として確立していくかです。私は、挑戦領域の製品を特定のエリアだけで終わらせてはならないと考えています。各エリアで生まれた価値ある製品を、グローバルで展開できるものへと早期に育てていくことが重要です。乳化・発酵素材事業では、技術のコアを守りながらアジアを起点に海外展開を進めるなど、具体的な動きも検討しています。植物性由来で満足感を実現したMIRA-Dashi®についても、エビタイプを含めたラインナップが広がってきました。こうした製品は、単に機能が優れているだけでは広がりません。食文化との親和性や、地域ごとの食習慣に合った提案があって初めて事業として定着していきます。その意味でも挑戦領域は製品開発だけでなく、市場への届け方まで含めて考える段階に入っていると思います。
一方で、課題も明確です。やはり、最も重要なのはスピードです。過去には、技術を確立してから販売につながるまでに10年を要したこともありました。技術としては間違っていなくても、その間に市場環境や顧客ニーズが変わってしまえば、結果として事業化のタイミングを逃してしまいます。だからこそ今は、事業本部のもとで製品開発テーマの優先度を決めて、成長性の高い領域へ資源を集中するよう進めています。
ただし、私は製品開発が課題起点だけに寄り過ぎることにも注意が必要だと考えています。課題への対応はもちろん重要ですが、それだけではいずれ他社に追随され、収益性も低下してしまいます。当社グループがこれまで成長してきた背景には、技術起点の開発、いわゆるシーズ型から市場を広げてきた歴史もあります。その際に鍵になるのは、技術と課題を結び付ける準備をしておくことです。従業員一人ひとりが日頃から課題意識を持ちながら情報や気付きを蓄積し、「この技術は、どの課題に効くのか」をすぐに結び付けられる状態をつくっておくことができれば、機会を逃さず市場投入につなげることができます。課題起点と技術起点の両輪を回し続けることが、挑戦領域を本当の意味で成長につなげるうえで不可欠だと考えています。
挑戦領域は、当社グループの将来の成長そのものです。足元の取り組みは着実に進んでおり、この流れをさらに加速させることで、2027年度の目標達成につなげるとともに、その先の当社グループの成長を支える新たな柱を育てていきます。

Question 5企業価値向上に向けて、今後の経営をどう進めていくか?
中期経営計画は必達目標。課題解決を起点に、成長の質と速度をさらに高めていきます。

当社グループは今、大きな転換点にあります。事業持株会社制への移行、ブラマーの構造改革、成長領域の拡大、挑戦領域の育成―いずれも企業価値向上に直結する重要なテーマです。そして私は、この一つひとつを確実に前へ進めることで、次の成長軌道に乗せていきます。
私たちの強みは、課題解決を通じて価値を創出する力にあります。お客様や社会が直面する課題を見つけ、4事業の力を使って解決し、生み出した価値を次の成長へつなげていく。この循環をより強く、より速く回していくことが、企業価値向上の本質だと考えています。市場環境が大きく変化する時代だからこそ、経営にはスピードが不可欠です。PDCAを速く回し、意思決定を速め、必要なところに経営資源を集中する。その姿勢を徹底していきます。
中期経営計画で掲げた事業利益450億円は、必達目標です。その先に見据えているのは、単に利益を伸ばすことだけではありません。当社グループが持つ独自の事業ポートフォリオを活かし、社会に必要とされる価値を提供し続けることで、持続的に成長できる会社になることです。私はその実現に向けて、これからも挑戦を続けます。



