ダイバーシティ経営の実践
特に貢献を目指すSDGs
マネジメント情報
テーマと事業活動の関わり
グローバルに事業活動を展開する不二製油グループにとって、人材の属性・価値観の多様性を尊重することは重要な社会的責任です。また、社会価値が変化する中で社会に貢献し続けるためには、過去の延長線上ではなく将来を見据えたバックキャスティングの事業戦略が重要であり、創造性がますます求められるようになります。同質の集団の中で創造力を発揮するのは限界があります。社会への価値提供の側面からもダイバーシティは重要です。人材が活躍できる環境や風土を整えることが、創造性豊かな戦略に基づいた事業創出に資すると認識しています。
考え方
多様な人材が価値観と個性を発揮できる環境を整えることが、社会に対して持続可能な価値を創造し続けるための源泉になると考えています。不二製油グループでは、「不二製油グループ憲法」の中で「人のために働く」という価値観を掲げています。これは、仕事をする上で対峙する人の立場に寄りそって考えることを意味し、当社グループがダイバーシティを活かし、社会に価値を提供するための基本となる考え方です。
この考え方に基づき、2020年度以降に向けて「不二製油グループダイバーシティビジョン」を策定しています。また、不二製油(株)においては、このビジョンを具体化するための「ダイバーシティ基本方針」を定めています。

不二製油グループダイバーシティビジョン
ダイバーシティを楽しもう
世界の多様な人材がお互いに刺激しあい、イノベーションを起こしていく。この過程をお互いに楽しみながら、多様性に富んだ世界中のお客様に様々な食シーンを通じておいしさと健康をお届けできるよう「人のために働く」を実践し、社会へ貢献します。
ダイバーシティ推進における重要な領域
不二製油グループでは、2020年度以降のダイバーシティビジョン策定に際して、ダイバーシティを推進する上での重要な領域として、性別、国籍、世代、専門性、経験を整理しました。従業員一人ひとりのバックグラウンドや個性が活きる姿を目指し、制度や意識の改革に取り組みます。

不二製油ダイバーシティ基本方針
多様な人材を幅広く求め、それぞれが持てる能力を最大限に発揮できる風土を醸成することで、社会への新たな価値提供を加速していきます。
- 採用、育成、登用などの人材発掘の全段階において、人員構成の多様性を意識します。
- 多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるよう、柔軟性のある制度展開を行います。
- 多様な人材の戦略的な活用を意識し、社会および会社への利益貢献へとつなげます。
推進体制
ダイバーシティ経営の実践については、最高総務責任者(CAO)の管掌のもとで取り組みを推進しています。また、ESG経営の重点テーマの一つとして、取締役会の諮問機関であるESG委員会※ において進捗や成果を確認しています。
※ ESG委員会の詳細については、以下のURLをご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/csr/approach/
推進体制

目標・実績
2019年度目標
- ダイバーシティ経営のビジョン・ロードマップの策定
2019年度実績
上記の目標に対する2020年度以降に向けてのビジョン※・ロードマップを策定しました。
※ ビジョンは本ページの「考え方」をご参照ください。
ロードマップ
イノベーションの源泉としてダイバーシティが経営を支え、おいしさと健康で社会に貢献し続ける姿を実現するためのロードマップを下図の通り整理しました。不二製油グループでは1999年度よりダイバーシティの推進に取り組み、これまでキャリアの継続にかかる全社的な制度や施策の強化を行ってきました。2020年度以降は新たなフェーズとして、経営陣によるコミットメントの強化のもとで、各部門におけるダイバーシティを実践していきます。

※ FDM:Fuji Diversity Management
Next Step
ロードマップに基づき、FDM(Fuji Diversity Management)3.0の施策として、多様な働き方を促進するため制度の拡充や意識改革の取り組みを通して、不二製油グループでのダイバーシティ経営の実践に取り組んでまいります。
FDM3.0施策

2020年度は、主に以下の項目について、活動を推進します。
○活きたキャリアの継続
- シニア層の活躍促進
- セカンドキャリア・ライフプラン研修の実施
○公正さの確保
- 部門目標の設定
管理職の意識改革 - アンコンシャス・バイアス研修の実施
○多様化の推進
- 障がい者雇用環境の整備
具体的な取り組み
日本における取り組み
活きたキャリアの継続を目指して
シニアの活躍
すべての従業員が当事者となるシニア層の潜在能力に注目し、今期のダイバーシティ推進の主要な柱の一つとして位置づけています。2020年度は下記の2つの施策を実施します。
- ① セカンドキャリア・ライフプラン研修の充実
- 50代での2度の研修を通して、早い段階でのキャリアの棚卸を可能にします。
- ② 個別キャリア面談の実施
- 研修対象者全員への個別キャリア面談を実施し、職場の期待と本人の要望をすり合わせ、今後の能力向上の方向性等について話し合います。
当社では、シニア層が高い能力と広い視野を背景に、多くの選択肢を持ち、定年後の自己実現を図れるよう支援するとともに、強い貢献意識をもって会社を支える人材を確保していきたいと考えています。
ライフイベントを乗り越える
当社では、永年にわたり女性の育児休業取得率100%を継続していますが、育休後のキャリア形成という面では課題もありました。そこで2014年度以降は支援のあり方を大きく方向転換し、それまでの雇用の継続を意識した制度に加え、ライフイベントを乗り越えてキャリアを積極的に構築していこうとする層をサポートするさまざまな制度を取り入れています。
2016年度には、入社3~5年目の若手女性に向け、ライフイベントを乗り越える研修として、生涯を通したキャリアの形成、両立支援制度、世代間の相互補助の形成についての提案、ロールモデルの提示、などを行っています。現在、この層が出産やキャリアの発展期を向かえ、しなやかに逞しくキャリアを形成する新しいロールモデル像を作り出しています。この研修は3~4年に1度の実施をベースにしており、2020年度も実施を予定しています。
また、2014年度から開始した育休復帰フォローアップセミナーは、上司・配偶者・男女の育児勤務者の3者形式でスタートしており、育児勤務者を取り巻く家庭・職場での支援の輪の形成や、育児勤務者自身の意識の変革につながりました。2019年度は、研修の骨子をまとめた小冊子「育休復帰おたすけノート」(上司版、育児勤務者版)を配布しています。
現在、女性管理職に占める育児勤務者も45%となっており、ライフイベントの有無に関わらず、キャリアを形成できる体制が整ってきたことを示しています。

公正さの確保
部門目標の設定
トップ方針を組織活動に完全に根付かせるため、2020年度は各部門での課題把握、目標設定、推進メンバー設置を実施します。目標と成果については、定期的に経営トップへの報告を行います。部門状況により、ダイバーシティの推進にばらつきのある状態を可視化することで、さらなる改善へとつなげていきます。
管理職の意識改革
機会の均等を確保するためには、人材育成の中心を担う管理職のあり方が最も重要になります。このため2019年度以降、管理職を対象として人材育成やダイバーシティマネジメントに関する研修を充実させてきました。2020年度は、アンコンシャス・バイアス※ 研修等を予定しています。
※ アンコンシャス・バイアス: 個人が持つ、無意識の思考のパターン、考え方の癖。自然界で大量の情報を瞬時に処理・対応して、生きていくために獲得した能力だが、現代では環境の変化に対応できないこと等が問題となっている。そのため、時折バイアスを意識上に持ってきて、修正することが必要となる。
多様な人材の活用推進
女性の活躍推進
1999年度に当社のトップ方針として女性活躍推進が打ち出され、これに対して女性活躍推進委員会(現:Fuji Active Network)を立ち上げ、本格的な取り組みを開始しました。
2016年度には、管理職に占める女性の比率目標を設定し、2020年4月までの4年間に管理職比率は3.78%から10.54%へと上昇しました。しかしながら、育成面での課題などから、2020年度の目標数値20%には達しませんでした。今後、採用・育成における機会の均等をさらに重視する必要があると認識しています。
採用に関しては、新卒の総合職に占める女性の割合が、2017年度以降4年間、ほぼ半数で推移しています。また育成面に関しても、仕事のアサイン、OJT※、OFF-JT※2 を含め、より公正な運用を推進していく予定です。
この他、2016年度より、内閣府の「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言に、不二製油グループ本社のCEOが賛同しており、従業員ならびに社会に対して、経営におけるダイバーシティの重要性を発信しています。
※ OJT:On the job trainingの略称。日常の業務につきながら行う教育訓練。
※2 Off-JT:Off the Job Trainingの略称。通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練。

外国籍社員の採用
さまざまな能力を持つ外国籍人材を採用しており、研究開発、企画、管理など多くの分野で活躍いただいています。国籍を理由とした待遇差はなく、個人の特性やスキルを尊重した職場配置を行っています。また、お祈りなどをできる多目的室の設置など、宗教・慣習を尊重した職場づくりに努めています。
障がい者の活躍推進
これまでも障がい者雇用に取り組んできましたが、知的障がいを持つ従業員が活躍する職場は多くはありませんでした。これに対応するため、2015年度より、地域の学校との連携や、職場体験実習の実施、先進企業との情報交換を通し、体制を整えています。一人ひとりの個性に配慮しながら、活躍の場を提供する、という基本姿勢に立ち返ることで、育成にあたる管理職の意識改革にもつながっています。
2020年度は、全社的に業務の洗い出しを行い、より多くの活躍の場を提供できる体制をつくることを目標にしています。
LGBT
2019年度、不二製油グループで実施した人権週間※ の一連の活動の中で、理解浸透が道半ばであるLGBTに関するセミナーを実施しました。当社の性的マイノリティである従業員が、自ら手紙を通して研修への積極的な関与を図ったことにより、多くの従業員がごく身近なダイバーシティの事例として、LGBTを捉えるきっかけとなりました。結果、役員をはじめ多くの従業員が実際にアライ(支援者)となり、ダイバーシティ推進担当を通して、対象の方への支持を表明するメッセージが沢山発信されてくるようになりました。一部の国内グループ会社でも同様のテーマで出張研修を実施しています。
- <研修参加者の声>
-
LGBTに限らず、人間は種々の価値観や考え方、個性、環境の中に生きています。そのそれぞれはその人物の価値を決めるものではなく、その人がその人であるためのものです。
企業は同じ目的のために働いて、社会に価値を創出していく団体であり、人に順位をつける組織ではありません。本来の業務以外のことで批判したり、仕事をしづらい環境を作ることは絶対に許されないし、その人である尊厳を犯すことはあってはならない。「人のために働く(当社のビジョン)。」そのことを改めて考えさせられました。
※ 人権週間の詳細については、以下のURLをご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/csr/social/human_rights/
非正規雇用の正規化
2017年度から、有期雇用契約の対象であった「準社員」を期間の定めのない「地域限定社員」に改めました。また、活躍の意欲にあふれる非正規雇用社員を対象に、年1回、正社員登用試験を実施しています。2020年度には男女併せて7名を登用しています。今後も本制度を通じて、能力と意欲のある人材の積極的な登用を図っていきます。
従業員主体の取り組み
ダイバーシティ推進のための重要施策の一つとして、1999年度より、部門横断的なプロジェクトであるFuji Active Network(FAN)を運営しています。人事担当役員がプロジェクトオーナーとなり、従業員自身がイニシアチブを取って、実際のニーズに根ざした草の根的な活動を実施しています。
2019年度では経営層へのリレーインタビューを実施し、ダイバーシティや人材育成についてのメッセージを、イントラネットを通じて全世界の従業員に届けています。また、米国のグループ会社であるブラマー チョコレート カンパニー(米国)とダイバーシティやESGについての意見交換を実施し、グループ間での共創を図っています。社内をリードする多くのダイバーシティ施策がFANを通じて生まれています。
各種制度の利用促進
当社グループではダイバーシティ推進において、常にトップからの強力な発信がなされています。一方で、従業員が自ら気づき、行動を起こすことも重視しています。上辺だけの成果を追い求めるのではなく、風土に根付き、従業員に腹落ちした形のダイバーシティを目指しています。
その一環として、ワーク・ライフ・バランス支援の制度についても、利用者層の拡充を図っています。最近では、多くの従業員が当事者となり得る介護休業制度と男性育児休業制度について取り組んでいます。
2013年度以降、介護セミナーの開催や介護ハンドブックの配布により、介護について相談することがごく普通の社風になるよう啓発を行っています。加えて、2016年度より介護費用の補助を実施しています。これにより、介護制度の利用者は管理職や男性社員も含め徐々に出てきています。
男性育休の取得促進については、2014年度以降継続して取り組んでいます。当社では、あくまで自由意志での取得を基本としていますが、2019年度は男性育休の取得率は91%を達成しました。休業期間は1週間未満が中心でしたが、2020年度に入り、数ヵ月~半年を越える取得者が複数出てきており、制度が根付いてきています。
働き方改革
働き方改革推進の全体像
ダイバーシティの実現に欠かせない働き方改革を推進するため、2016年度に“Creative Workプロジェクト”(現CWORK推進会議)を立上げました。生産性の向上による総労働時間の削減およびワーク・ライフ・バランスの向上を目指し、意識改革、業務改革、制度改革、職場創生の4つの改革に取り組んでいます。
2017年度からは、在宅勤務制度をさらに発展させるべく、テレワークを試行的に実施、サテライトオフィスの導入も行い、新たなワークスタイルを検討しています。併せて、RPAの導入、申請フローの電子化、TV会議の積極利用により、コミュニケーションの活性化、ペーパレス化も推進しています。
これにより、新型コロナウイルス(COVID-19)への対応では、スムーズな在宅勤務への移行が行われ、従業員の約半数が実際に在宅勤務を経験しました。これを契機に、ITを活用して、時間や場所にとらわれずに成果を発揮できる仕組みをさらに定着させていきたいと考えています。
グローバルな取り組み
不二製油グループの事業活動には、従業員、お取引先様、お客様、消費者、そしてサプライチェーン上の小規模農家の方々まで、さまざまなステークホルダーと関わっています。当社グループは「人のために働く」をグループ憲法の価値観の一つに据えています。「人のために働く」ことの本質は、仕事をする上で関わる人の立場に立って考え・行動することに他なりません。
2019年12月、人権週間※ において、グローバルにメッセージを発信し、人権尊重や差別の禁止に関する啓発活動を行いました。このような活動は今後も継続してまいります。
※ 人権週間の詳細については、以下のURLをご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/csr/social/human_rights/
外部からの評価
2020年3月末時点迄の、ダイバーシティに関連する主な外部評価は以下の通りです。
- 17年3月 大阪市女性活躍リーディングカンパニー 市長表彰受賞
- 17年8月 厚労省「プラチナくるみん」認定
- 19年12月 MSCI日本株女性活躍指数構成銘柄入り