食資源不足へのソリューション提供
マネジメント情報
事業活動との関わり
不二製油グループは創業間もない頃から、人口増加とともに起こる食資源不足の問題に対して、植物性食品素材を通してソリューションを提供することを目指してきました。具体的には、植物性のタンパク源が動物性タンパク源の不足を補うと考え、1957年から60年以上、大豆たん白の可能性を追求しています。
2050年に世界の人口は97億人に増加すると予測されています。植物性のタンパクを使用した食品素材を通して、人口増加などに伴う食資源不足の問題にソリューションを提供することは、重要な使命であると考えています。
考え方
昨今では、グローバル社会において食資源不足や地球環境問題への危機感がますます高まっています。従来、植物性のタンパク素材は動物性タンパクの「代替」でしたが、不二製油グループでは、単に動物性食品を置換するのではなく、「植物性食品素材ならではのおいしさの提供と社会課題解決」をコンセプトに、市場における植物性食品というカテゴリーを確立し、社会課題の解決に貢献したいと考えています。
推進体制
食資源不足へのソリューション提供については、最高技術責任者(CTO)の管掌のもとで取り組みを推進しています。また、ESGマテリアリティ※1の一つとして、取締役会の諮問機関であるESG委員会※2において進捗や成果を確認しています。ESG委員会の結果については取締役会に対して報告し、取締役会のレビューを受けています。
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※1 ESGマテリアリティの詳細については、以下のURLをご参照ください。
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※2 ESG委員会の詳細については、以下のURLをご参照ください。
目標・実績
〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満
2020年度目標 | 2020年度実績 | 自己評価 |
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植物性食品素材による食肉代替製品※1の製品化 | 食肉代替製品および調理用呈味素材を製品化、上市。 | ○ |
植物性食品素材による調理用呈味素材※2の製品化 | ||
植物性チーズ様食品のバラエティー化 | 植物性チーズ様食品のバラエティー品(ソイデリスシュレッド※3)を上市。 | ○ |
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※1 食肉代替製品:植物性食品素材を使用して作ったパティやナゲットなど従来の食肉加工食品風の製品。
※2 呈味素材:食品の味(甘味、塩味、酸味、苦み、うま味など)を作り出す素材。
※3 ソイデリスシュレッドについては、研究開発による動物性タンパク代替素材の拡大をご参照ください。
考察
消費者の健康や地球環境への意識向上に伴い、お客様の植物性食品への関心が高まったことで、食肉代替製品や調理用呈味素材の需要が増えています。
Next Step
食資源不足へのソリューション提供において、単に食肉を代替する植物由来のタンパクを提供すれば良いのではなく、食の歓びにつながるおいしさを創造することが重要です。この課題への対策として、以下の2021年度目標に取り組んでまいります。
- 本格的な肉素材・食肉製品を目指したおいしい大豆ミート素材、食品の開発
- 植物性素材をベースとしたPlant-Basedミルクの開発
具体的な取り組み
研究開発による動物性タンパク代替素材の拡充
不二製油グループは、長年培った大豆たん白の開発技術を駆使し、食資源不足や地球環境問題の解決に寄与する植物性素材のおいしさを活かした動物性タンパク代替素材の開発に努めています。
2020年度は、当社グループのUltra Soy Separation技術(USS技術)※を活用した新製品として、豆乳を発酵させたチーズ「ソイデリスシュレッド」を開発しました。ソイデリスシュレッドは発酵にこだわり、まろやかでコクのある「豆乳チーズ」を細かく刻んだものです。厳選した乳酸菌と独自の発酵技術を駆使することで、濃厚なうま味とコクが付与されています。シュレッド形状のため、使い勝手が良く、ピザやグラタンなど各種メニューに使用できる製品です。
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※ Ultra Soy Separation技術(USS技術):生乳の分離法に近い方法で、豆乳を豆乳クリームと低脂肪豆乳に分離する技術。2012年に世界初の大豆分離分画技術として特許を取得。

ソイデリスシュレッド
市場への提案による価値創出
SDGsの認知向上により、Plant-Based Food(植物性食品)への関心が高まっています。不二製油グループ本社は、消費者満足度の高いPlant-Based Foodを消費者にお届けする拠点として、2019年にUPGRADE Plant based kitchen(以下、UPGRADE)という惣菜のレストランを大丸心斎橋店に期間限定店舗としてオープンし(2021年3月14日閉店)、2020年には東京有楽町にて、同店舗のポップアップイベントを開催しました。それぞれの活動では、お客様にその場でメニューを体感していただくとともに、今後のPlant-Based Foodの普及につながるよう、購入データの分析やアンケート調査を実施しました。UPGRADEを通じて得たデータは、新商品開発やPRにつなげていきます。2021年度も、不定期の実施にはなりますが、コロナ禍でも身軽にさまざまな生活拠点で食を提供できるキッチンカーをはじめとする多様な業態で、UPGRADEの活動を続けてまいります。
なお、BtoB企業でありながら、積極的に消費者の声を収集する仕組みづくりやエシカル消費への理解と普及促進に関する活動が評価され、2020年度は、令和2年度消費者庁「消費者志向経営優良事例表彰」において消費者庁長官表彰(特別枠)ならびに農水省「サステナアワード2020伝えたい日本の“サステナブル”」レジェンド賞をいただきました。

UPGRADE Plant based kitchen 大丸心斎橋店

持続可能な社会の実現に向けた企業間連携
海外では注目度の高いPlant-Based Foodも、日本においてはまだ認知度が低く選択肢も限られており、Plant-Based Foodの背景にある社会課題への意識や解決に向けた消費行動も少ない状態です。そこで2021年3月、地球と人の健康と社会の持続的な発展を目的に、Plant-Based Foodが当たり前の「おいしい」「楽しい」「ヘルシー」なライフスタイルを産官学民連携で普及させていく「Plant Based Lifestyle Lab(P-LAB)※」を、分野横断的に集まった賛同企業15社で設立しました(幹事:不二製油グループ本社、カゴメ株式会社、株式会社パソナグループ)。P-LABでは、会員企業間の共創によるPlant-Based Foodの商品やメニューの共同研究開発のほか、大学や官公庁などとの連携によるサステナビリティやPlant-Based Foodに関する啓発、Plant-Based Foodと農業・健康・美容・観光・教育などのさまざまな分野との融合による価値創造を予定しています。
不二製油グループはP-LABの活動を通じて、地球と共存できる健康的で歓びあふれる食生活を創出していくとともに、持続可能なフードシステムの構築に寄与してまいります。
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※ P-LABの詳細については、以下のURLをご参照ください。
ブルキナファソにおける栄養改善および女性の収入向上のための大豆商品サプライチェーン構築とビジネス調査
ガーナにある当社グループ会社のフジ オイル ガーナでは、原料のシアカーネルの多くを隣国のブルキナファソから調達しています。この地域でシアカーネルを収穫している女性たちの多くは、大豆生産にも従事しています。そこで当社グループは、ブルキナファソにおける大豆の調達および「大豆ミート」の開発・製造・販売を通して現地の消費者の栄養改善と農家の収入向上を目指すために、2019年から事業化可能性調査を実施しています。本調査は、国際協力機構(JICA)の「2018年途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」※に採択されており、本枠組みの中で、SDGsターゲットへの貢献可能性についても検討を進めています。
2020年度は、隣国のコートジボワールも含めた流通構造調査や、学校給食も含めた市場調査を実施しました。さらに、ブルキナファソの大豆を用いた大豆ミートの製品試作にも着手しています。当社グループのたん白技術を活かして現地の豊かな食生活に寄与できるよう、今後もバリューチェーンの各段階における調査を予定しています。
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※ 国際協力機構(JICA)「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」:開発途上国において持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献するビジネスを計画している本邦法人の提案に対して、調査費用1件5,000万円を上限として最大3年間の期間でJICAが支援を行い、事業計画の策定を行うもの。

大豆ミートを利用した現地風料理