社会インパクトとESGマテリアリティ
社会の中の不二製油
不二製油グループのバリューチェーン
植物性油脂事業、業務用チョコレート事業、乳化・発酵素材事業、大豆加工素材事業の4つの事業を展開し、パーム油・カカオ・大豆といった農作物を主原料に、チョコレート用油脂や業務用チョコレート、ホイップクリーム、マーガリンや大豆たん白素材などのさまざまな食品素材を開発・製造・販売しています。顧客は食品メーカーや外食店、コンビニエンスストアや小売店など、さまざまな業態にわたります。
ESGマテリアリティの特定
考え方
不二製油グループは社会への価値創造に取り組み、自社の持続的な成長と持続可能な社会の発展を目指しています。さまざまな社会課題がある中、当社グループが優先して取り組む重要な課題を「ESGマテリアリティ」として定め、事業活動を通じて「ポジティブインパクトの創出」あるいは「ネガティブインパクトの低減」に努めます。
2023年度 ESGマテリアリティ
2023年度のESGマテリアリティは以下のとおりです。各ESGマテリアリティに対する考え方や目標、取り組み状況などは関連ページをご参照ください。
価値創造
サステナブルな食資源の創造
人口増加によるタンパク源の逼迫や環境負荷の増大、食の偏在が懸念されています。食糧増産による環境の悪化を抑制するため、環境負荷の低い植物性タンパク質の開発に取り組みます。また、各国・地域における食の伝統や価値観、嗜好、アレルギーへの対応など、多様なニーズに対応することで食の選択肢を増やし、健康的な食生活に寄与します。
創出するポジティブインパクト
- 多様な食の選択肢による豊かな食シーンの提供
- 持続的なタンパク源供給による食資源の偏在の解消と健康増進への寄与
- 植物性食品素材の消費拡大による環境負荷の低減(CO2排出量や水使用量の削減)
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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植物性タンパク資源の創造 |
植物性タンパクが広く浸透し、当たり前に入手できる社会を実現することで、食の選択肢を増やし、食糧問題をはじめとする社会課題解決に貢献する
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健康と栄養
ライフステージの変化や食・生活習慣に起因する健康課題の増大が危惧されている中で、人々が心身の不自由なく生きがいを持って暮らせる社会の構築が望まれています。高齢者の健康維持や増進に効果が期待される安定化DHA・EPAの効率的な摂取や、糖質やトランス脂肪酸といった生活習慣病リスクを高める食品素材の過剰摂取を緩和することにより、人々の心身の健康と食の喜びを両立し、健康寿命の延伸へ貢献します。
創出するポジティブインパクト
- 高齢者のウェルビーイングの実現
- 生活習慣病の予防
- おいしさと健康の両立
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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超高齢化社会の先頭を走る日本において、シニアが生きがいを持ってより良く生き続けられる社会の構築。食素材開発や健康エコシステムの構築により「見える化」を進めることで、シニアの健康課題を予防し、ウェルビーイングの実現に貢献
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糖質低減 |
食品の糖質の一部を植物性タンパク素材で代替し、生活習慣病の予防に資する栄養バランスに優れた食品の提供
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低糖質化/タンパク強化した食品の市場拡大
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WHO指針および各国での法規制に基づいた、トランス脂肪酸摂取量が総エネルギー摂取量の1%以上である地域における、製品中のトランス脂肪酸含有量の低減
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パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)、フジオイル(シンガポール)、不二製油(張家港)有限公司(中国):変更対象全製品のトランス脂肪酸の低減(2g-TFA/100g-oil 以下)
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海外の対象グループ会社14社のうち11社で低トランス脂肪酸製品への変更が完了(2023年3月時点)
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サステナブル調達
各事業に使用している主原料および戦略原料の生産地では、農園開発による森林減少や自然生態系の破壊、強制労働、児童労働など解決すべき喫緊の課題があります。サステナブルな調達を将来にわたって構築していく一環として、サプライヤー行動規範、責任ある調達方針に基づく活動を推進し、生産地における環境負荷の低減と人権課題の解決に継続して取り組んでいきます。
低減するネガティブインパクト
- 旧態依然の労働慣行による人権侵害
- 農家の貧困
- 児童労働、強制労働
- 先住民、地域住民、労働者からの搾取
- 自然生態系の破壊や損失
- 土地の利用の転換
- 不適切な廃棄物による環境汚染
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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カカオのサステナブル調達 |
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大豆のサステナブル調達 |
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- ※1 Labour Transformation Programme。
- ※2 Good Agricultural Practices(農業生産工程管理)。
- ※3 Round Table on Responsible Soy Association(責任ある大豆に関する円卓会議)。
環境
気候変動
原料の多くを農産物に依存する当社事業の持続性において、地球温暖化は喫緊の課題です。自社の操業範囲だけでなくサプライチェーン上のCO2排出も削減し、気候変動の緩和に貢献します。
低減するネガティブインパクト
- サプライチェーン上のCO2排出量
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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CO2の排出削減 |
<環境ビジョン2030>
2030年にCO2排出量(総量)をスコープ1+2で40%削減、スコープ3(カテゴリ1)で18%削減(基準年2016年) 注:SBT認定取得 |
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環境に配慮したものづくり |
脱ケミカルやCCU(CO2の有効利用)などの技術開発による自社バリューチェーン上の地球環境負荷の低減
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水資源
水は製造工程および原材料として多く使われています。自社操業の各工程における水使用量の削減と適切な水管理により、限りある水資源の持続可能性を高めます。
低減するネガティブインパクト
- 水資源の枯渇
- 水資源の汚染
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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水使用量の削減 |
<環境ビジョン2030>
2030年に水使用量原単位を20%削減(基準年2016年) |
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27%削減(基準年2016年)
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サーキュラーエコノミー
循環型社会の実現には、食料資源を無駄なく有効活用することが必須です。グループ全体で廃棄物の削減とアップサイクル技術の開発に努めます。
低減するネガティブインパクト
- 無駄なエネルギーや食資源の消費
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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廃棄物の削減 |
<環境ビジョン2030>
2030年に廃棄物量原単位を10%削減(基準年2016年) |
継続的な削減活動の推進および意識レベル向上
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4.7%削減(基準年2016年)
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技術イノベーションならびに副産物の再利用を通じたバリューチェーン上のフードロスおよび廃棄物削減
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生物多様性
当社グループの事業活動は、豊かな自然生態系の恩恵を受けると同時に、気候変動や生物多様性に影響を与えています。生物多様性の保全と回復に取り組み、自然と共生する社会の実現に貢献します。
低減するネガティブインパクト
- 自然生態系の損失
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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生物多様性の保全と回復 |
ネイチャーポジティブなバリューチェーンの構築
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生物多様性への依存と影響評価の検討
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不二製油グループ生物多様性方針を制定および公表
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安全・品質
製品の安全性と品質
安全かつ良質な食品の提供は食品メーカーの社会的責任です。食の安全を最優先に、当社グループの顧客の皆様には安全安心な製品を、その先の消費者の皆様にはより良い食の選択肢を提供します。
低減するネガティブインパクト
- 健康被害の発生、食品関連法規違反
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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製品安全と品質の徹底 |
製造される全ての製品において、自社が原因となるクレームゼロ
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重大品質クレームゼロ
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重大品質クレーム0件
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労働安全衛生
従業員の安全確保は事業活動の基盤です。重大災害や重大物的事故が発生すれば従業員や家族・地域ならびに社会への影響は大きく、生産活動にも影響が及びます。「安全は全てに優先する」という考えのもと、従業員の安全と健康の確保により、安全安心な職場環境を作ります。
低減するネガティブインパクト
- 重大災害や重大物的事故の発生
- 労働による傷害や疾病、体調不良の発生
- 職場での感染症集団感染の発生
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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労働安全衛生の推進 |
人間尊重および安全第一を最優先とし、「安全で快適な職場」づくりによって全グループ会社で災害ゼロ
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経営基盤
DE&I※1
多様化する顧客ニーズや価値観に対応し、イノベーションを創出するには、多様な価値観を受け入れ、個性を発揮できる職場環境を整えることが重要です。全ての人材が最大限に能力を発揮できるよう、従業員の多様性を尊重し、不二製油グループ憲法「人のために働く」を実践します。
創出するポジティブインパクト
- 公正な機会の提供と評価
- ディーセントワークの推進
- 多様かつ高度な専門性を持つ集団による創造力の発揮
低減するネガティブインパクト
- 国籍、性別、人種、年齢、性的志向、人格、障がいの有無などによる差別
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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DE&Iの実践※2 |
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<グループ全体>
<日本>
<海外>
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<グループ全体>
<日本>
<海外> ハラルド(ブラジル) 中国エリア
フジ ベジタブルオイル(米国)
東南アジアエリア 欧州エリア |
- ※1 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン。
- ※2 公正な機会提供や評価とインクルーシブなマネジメントによる多様な人材の活用。
人材確保・育成
事業競争力を高めていくためには、新たな価値を創出する人材の確保と、各人に期待される技術やスキルの育成が、当社グループと従業員双方の成長にとって要となります。従業員の自律とエンゲージメントを促進する施策と組織風土を醸成していきます。
創出するポジティブインパクト
- 従業員のエンゲージメント向上
- 多様かつ高度な専門性を持つ集団による創造力の発揮
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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人材確保・育成 |
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<人材確保>
<人材育成>
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2022年度ESGマテリアリティとして該当なし
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GRC※
不確実性が高い事業環境下では、レジリエンスを高め、リスクに強い事業経営を行うことが重要です。BCPの強化、情報セキュリティの強化、コンプライアンスの強化といったリスクの発生、ならびに、リスク発生時の影響を最小化する取り組みなど、グループのガバナンス強化により企業価値向上を目指します。
低減するネガティブインパクト
- 有事の際の操業停止の発生
- 情報漏洩の発生
- 腐敗、贈収賄や反競争的行為、その他法令違反の発生
取り組みテーマ/管掌者/特に貢献を目指すSDGs | 目指す姿 | 2023年度目標 | 2022年度実績 |
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リスクマネジメントシステム |
リスクに強く、社会からの信頼を獲得する高信頼性企業の実現
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コンプライアンスの強化 |
公正かつ透明性を持った事業活動を行い、全てのステークホルダーから信頼される誠実な企業
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グループガバナンスの向上 |
有効なグループガバナンス体制の構築を通じた企業価値の向上
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取締役会の適正な運用を通じた企業価値の向上
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経営の監督(モニタリング)を中心とした取締役会運営の定着
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監査等委員会設置会社への移行による経営の監督(モニタリング)を中心とした取締役会運営
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- ※ ガバナンス・リスク・コンプライアンス。
2023年度ESGマテリアリティ特定プロセス
不二製油グループは、毎年、新たな社会課題の把握と社内外ステークホルダーからの助言をもとに、翌年度のESGマテリアリティを特定し、各マテリアリティへの取り組みテーマを策定して進捗を管理しています。2022年度は、社会課題リストから抽出した15のESGマテリアリティの重要度について「不二製油グループが社会・環境に与える影響度」と「社会・環境課題が不二製油グループに与える影響度」の2軸で評価しました。2023年度ESGマテリアリティマップ案は、ESGマテリアリティ管掌者、地域統括トップ、関係部門、社内外有識者との意見交換を経て作成され、サステナビリティ委員会での審議・決議後、グループ本社取締役会へ答申し決裁されました。
なお、2023年度ESGマテリアリティは、GRIスタンダード※1ならびにESRS※2を参考に、以下の観点で2022年度版から更新しました。
- ESGマテリアリティマップの縦横軸のレベルを「中」~「極めて高い」へ変更
- ESGマテリアリティマップ「不二製油グループが社会・環境に与える影響度」を、正/負の影響の規模や範囲・深刻度・発生可能性から総合評価
- ESGマテリアリティマップ縦横軸いずれかの影響度が「極めて高い」社会課題をESGマテリアリティと特定
- 新規マテリアリティとして「人材確保・育成」を追加
- ESGマテリアリティカテゴリーを「価値創造」「安全・品質」「環境」「経営基盤」の4つに分類
- ※1 Global Reporting Initiative。
- ※2 European Sustainability Reporting Standards。
特定プロセス
アドバイス(例)
2023年度ESGマテリアリティマップ

- ※1 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン。
- ※2 ガバナンス・リスク・コンプライアンス。GRCにはコーポレートガバナンスと内部統制の観点が含まれますが、サステナビリティ委員会においては内部統制に関わる項目をモニタリングします。コーポレートガバナンスは取締役会にてモニタリングします。