水溶性大豆多糖類~飲料・中食市場に革命を起こす~
大豆業界の悩み、オカラ
豆腐や豆乳を作るために大豆を工業的に使用すると大量のオカラが排出されます。オカラの一部は食品などに使用されるものの、多くは利用されておらず、オカラの処分は大豆を扱う企業に取って大きな課題でした。オカラの廃棄は環境負荷も高く、不二製油においても、使用した大豆から大量に排出されるオカラは、乾燥後に肥料や飼料に用いるなど莫大なコストをかけて処理されていました。
大豆の可能性を信じ、大豆の事業を推進していく不二製油は、この課題に立ち向かい、オカラの有効利用の検討を始めました。
水溶性大豆多糖類の抽出に成功
オカラは食物繊維を多く含むことで知られていますが、多糖類(=食物繊維)には、物性の改良や栄養生理効果など、様々な興味深い機能が知られています。私たちはオカラを原料に画期的な方法を用いることで、オカラから水溶性の繊維(=水溶性の大豆多糖類)を取り出すことに成功。そして水溶性大豆多糖類を食品素材として活用できないか研究を行ったところ、様々な可能性を持つ機能を発見しました。
それまで不可能だったすっきりとした飲み口の酸性乳飲料
水溶性大豆多糖類が食品市場に革命を起こした機能が、酸性乳飲料の安定化です。乳飲料は酸性にすると、乳蛋白が沈殿してしまいます。それを防止する安定剤として、従来は果物から抽出されるペクチンを用いることで、乳蛋白の沈殿を抑えていましたが、飲み口がドロリとしまいます。一方、水溶性大豆多糖類を用いると、乳蛋白の沈殿を防ぎながら、すっきりとした飲み口の爽やかな酸性乳飲料がつくれることがわかりました。
分子構造を調べると、マイナスに帯電した水溶性大豆多糖類が、乳蛋白粒子の表面を水の層を伴って覆うことで、乳蛋白粒子が互いにくっついて沈殿するのを防いでいることがわかっています。
水溶性大豆多糖類 |
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水溶性大豆多糖類を利用し、乳蛋白が沈殿しない、清涼感のある酸性の乳飲料が誕生しました。長期間保存しても沈殿が起きず、見た目を損なわないため、ペットボトル飲料などに多く使用されています。この機能は飲料のみならず、冷菓、デザート等にも広く使用されています。
酸性乳飲料 | ||
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水溶性大豆多糖類がないと |
水溶性大豆多糖類の効果で |
長期間保存しても |
中食市場に欠かせない存在へ
さらに、水溶性大豆多糖類は米飯や麺類に効果があることもわかりました。水溶性大豆多糖類が表面で水分を保つため、これを入れて調理した米飯は表面がしっかりとし、冷蔵で保存しても硬くなりにくく、また麺同士のくっつきも防止できます。このような効果を与える水溶性大豆多糖類は、コンビニエンスストアやスーパーで販売される米飯製品や麺類に広く使用されています。
調理麺のほぐれ性改善
水溶性大豆多糖類は、今や中食市場では欠かせない食品素材となりました。誰もが有効利用できなかったオカラが、不二製油の研究開発によって水溶性大豆多糖類として生まれ変わり、新しい価値を市場に与えることができました。この功績が評価され、不二製油の開発担当グループは2006年に文部科学大臣表彰科学技術賞を、この開発を主導した不二製油の前田裕一 は2008年に紫綬褒章を受章しました。
※社名は受賞時