プライムテクスチャー製法~肉らしい食感や油のうまみを表現した新タイプの大豆ミート~
大豆の油よりもむしろ、たん白質の開発を
1950年、製油メーカーとして出発した不二製油ですが、まわりの製油メーカーはすでに戦前からの老舗企業ばかり。後発の当社は油を搾るための油脂原料の入手も困難でした。そこで、大豆から油をしぼったあとの脱脂大豆に着目します。脱脂大豆には必須アミノ酸を多く含むたん白質が豊富に含まれています。「油よりもむしろ、脱脂大豆の開発を主体とすべきだ」と発想を転換し、脱脂大豆の研究に舵を切ります。1969年粒状大豆たん白(大豆ミート素材)「フジニック」が誕生しました。「いつか必ず植物性たんぱくが必要とされ、社会に役立つ時がくる」、そこには当時の経営者の熱い想いがありました。
実は、パームなどの油脂原料の搾油を行う一方で、油を搾ったあとの脱脂粕(ミール)のアミノ酸分析研究も進めていました。この研究が脱脂大豆の研究へとつながり、後の大豆たん白の食品利用に結び付きます。
※脱脂大豆とは
大豆を絞った後に残るもの。油分が抜けた分、たん白質の割合が高くなるため、脱脂大豆中に含まれるたん白質は5割程度になります。
粒状大豆たん白(大豆ミート素材)の製造
粒状大豆たん白は脱脂大豆に水を加え、エクストルーダーという装置で高温高圧で練り込み、常温常圧下に噴き出すことで膨化させ、乾燥させて作ります。膨化させることでポーラス状(多孔質状)になり繊維感や食感が表現できます。
現在、不二製油では、色調はチキン、ビーフ、ポークタイプを揃え、形状はひき肉、薄切り肉、塊肉状のものなど、約70種類の粒状大豆たん白を製造しています。一方、粒状大豆たん白の食感や風味については、まだまだ改善の余地があると考えていました。研究員は日々新たな製法を検討してきました。
一般的に、粒状大豆たん白に含まれる油分は数パーセント以下のため、本物の肉と比べるとどうしてもパサつきが気になり、口溶けがよくない、という課題がありました。とはいえ、単純に製造時に油脂を加えればよいというものではなく、油脂を加えることでかえって肉のような繊維感が再現しづらく、食感が弱くなるという問題もありました。
カギは油脂とたん白の加工技術の組み合わせ
不二製油は、大豆素材研究の他、チョコレート用油脂をはじめとする植物性油脂の研究開発を長年行っています。油脂の研究から得た知見をもとに、大豆ミート素材の製造方法を一から見直しました。そこで油脂とたん白の加工技術を応用することで、肉らしいかみ応えや食感、ジューシー感などを再現した新しい大豆ミート素材を製造することに成功しました。「大豆のおいしさ」を活かしつつ、これまでは困難であった「肉の様な繊維感や噛み応え」と、「くちどけ」を両立しています。
※新製法「プライムテクスチャー製法」は特許出願済み。
この新製法(プライムテクスチャー製法)による新・大豆ミート素材は、乾燥タイプと冷凍タイプの2種類があります。新・大豆ミート素材に含まれるのは5~10%程度の植物性油脂です。また、冷凍タイプの大豆ミート素材は好みの大きさに切り出して、そのまま調理できます。
乾燥タイプ(水戻し後)
乾燥タイプ(調理例)
冷凍タイプ
冷凍タイプ(調理例)
また、プライムソイ国産大豆(粒タイプ)は、長年培った大豆と油脂の技術を応用したプライムテクスチャー製法により、「国産大豆のもつ甘み、うまみ、そしてより食べやすい食感」を引き出した大豆加工素材です。
普段のお料理にも手軽に幅広く使っていただける、自然な味わいがつまった便利な食材です。
近年、環境への負荷や人口問題などの社会課題に対し、大豆ミートはサステナブルな食材として注目されています。おいしく、簡単に調理できる大豆ミートが広がり、さらに身近な食品として受け入れられることに大きな期待が寄せられています。