12. 大豆たん白の健康知識 美筋と大豆たん白
大豆たん白は不要な脂肪を減らします
美筋エクササイズとは、運動によって美しい筋肉を作ることですが、同時に身体についている無駄な脂肪を減らすことも大切です。身体の中の脂肪組織や筋肉組織には、脂肪を燃焼させエネルギーを作り出す「UCP( uncoupling protein:脱共役たん白質) 」というたん白質が存在します。マウスの実験で、人為的にUCPを低下させると肥満になり、逆にUCPを増やすとスリムになるという事実が知られています。大豆たん白を摂食することで、UCPが増加するという研究結果があります(下図、注1)。ラットの実験でも、大豆たん白は、UPC1の発現量を有意に増やしたと報告されています(注2,3)。
大豆たん白はUCPを増やすことで、不要な脂肪を減らす働きが期待できます。

大豆たん白は、肝臓脂肪酸合成酵素の活性と発現量を減らす一方、脂肪酸酸化酵素の活性と発現量を上昇させる働きがあると報告されています(注2)。また、大豆たん白は、コレステロール代謝を制御する転写因子(SREBP)1の発現量を減らし、SREBP2を上昇させることで、肝臓脂肪堆積を減らすとともに脂肪細胞面積と体脂肪も減少させると報告されています(注3)。
高脂肪食負荷による肥満マウスに対し大豆たん白を主としたダイエット食を与えると、カゼイン(乳たん白)食に比べ、体脂肪量(注4,5)、腸間膜脂肪量(注4)が著しく減少しました。正常(非肥満)ラットにおいて、大豆たん白食はカゼイン食に比べ、肝臓および脂肪組織重量が低下し、脂肪蓄積時に低下する血中アディポネクチン(Adiponectin)濃度が有意に上昇しました(注5,6)。
内臓脂肪肥満モデル(OLETF)ラットの実験において、すでに内臓脂肪型肥満のOLETFラットに対し、摂取カロリーを60%に制限したエネルギー食を与え、たん白質を大豆たん白質に置き換えた際の減量効果を検討したところ、大豆たん白摂取群はカゼイン群に比べ、体重(注7,8)が減少し、腹腔内脂肪と皮下脂肪の組織重量(注7,8)も低下し、腹部皮下脂肪組織の脂肪細胞面積(注8)も有意に減少しました。
以上のことから、大豆たん白は、
① 脂肪を燃焼させるUPCを増やす
② 肝臓での脂肪酸合成を減らし、脂肪酸酸化を増やし、肝臓脂肪堆積を減らす
③ 脂肪細胞面積を減らすことにより、不要な脂肪を減らす
と考えられます。
(注)
1. 福田ら, UCP family発現に対する分離大豆たん白質の影響: ラットの動物実験と初代培養脂肪細胞での研究. 大豆たん白質研究. 2005; 8:103-7.
2. Takahashi & Ide. Effects of soy protein and isoflavone on hepatic fatty acid synthesis and oxidation and mRNA expression of uncoupling proteins and peroxisome proliferator-activated receptor gamma in adipose tissues of rats. J Nutr Biochem. 2008; 19(10):682-93.
3. Torre-Villalvazo et al. Soy protein ameliorates metabolic abnormalities in liver and adipose tissue of rats fed a high fat diet. J Nutr. 2008; 138(3):462-8.
4. 松澤佑次. 生活習慣病における脂肪細胞の意義と大豆たん白質の効果:体脂肪分布と脂肪細胞機能,特にアディポサイトカイン分泌に及ぼす大豆たん白質の影響(第一報). 大豆たん白質研究. 2002; 5:1-9.
5. 松澤佑次. 生活習慣病における脂肪細胞の意義と大豆たん白質の効果:体脂肪分布と脂肪細胞機能,特にアディポサイトカイン分泌に及ぼす大豆たん白質の影響(第二報). 大豆たん白質研究. 2003; 6:1-10.
6. 松澤佑次. 生活習慣病における脂肪細胞の意義と大豆たん白質の効果:体脂肪分布と脂肪細胞機能,特にアディポサイトカイン分泌に及ぼす大豆たん白質の影響(第三報). 大豆たん白質研究. 2004; 7:1-12.
7. 森ら. OLETFラットのカロリー制限による減量に及ぼす大豆たん白質の効果. 豆たん白質研究. 1998; 1:96-101.
8. 森ら. 大豆たん白質の抗肥満効果における褐色脂肪組織内脱共役たん白質の関与:OLETFラットのカロリー制限による減量実験での検討. 豆たん白質研究. 1999; 2:118-24.