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大豆で健康

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大豆たん白質の健康知識 女性の健康編

加齢と大豆たん白質

 日本人女性の平均寿命は85.49歳。閉経後も多くの女性は20年、30年と長生きします(注1)。しかしそれに伴い、更年期障害や、動脈硬化や心臓疾患による突然死、骨粗しょう症が原因の骨折や寝たきりの危険も高まります。

【1】更年期傷害

 更年期になると、卵巣でつくられる女性ホルモン、エストロゲンの分泌が激減します。これが主な要因となり、のぼせ、ほてり、冷え、抑うつ、不安感、肩こり、関節痛、腰痛、腹痛などのトラブルが生じます。

ホルモン補充療法への不安

 現在、アメリカではこれらの症状に対して、エストロゲンを人為的に補う「ホルモン補充療法(HRT)」が最も一般的な治療法です。しかし近年の調査では、45歳~60歳の女性のうち、HRTを受けている人は34%で、残り66%のうち大部分の人は、副作用とくに乳がんのリスクを懸念して、HRTを受けていないことがわかりました(注2)。

大豆イソフラボンの更年期障害軽減効果

 ホルモン補充療法に代わる食事療法として注目を集めているのが、エストロゲンとよく似た作用をもつ大豆イソフラボンです。
 週に14回以上のぼせ症状がある閉経後のアメリカ人女性58人を2グループに分け、それぞれに大豆と小麦の粉末45gを12週間摂取させた実験があります。大豆グループは40%、小麦グループでも25%のぼせは減少しましたが、大豆グループは小麦グループに比べ、早い段階から有意な結果が得られました(図1)。
 閉経後の女性104人を2グループに分け、毎日60gの大豆たん白(76mgのイソフラボンを含む)と、60gのカゼイン(乳たん白)を12週間摂取させた実験では、2週目以降から有意差が現れ、大豆たん白はカゼインに比べ、のぼせ(夜間の発汗を含む)解消に顕著に効果があることも分かりました(図2)。
 日本では、6年間にわたり35歳から54歳の女性116人を対象に、摂取した栄養素の量と、のぼせ、ほてりの症状の関連が調査されました。期間中101人が軽度から重度の症状を訴えましたが、大豆食品をたくさんとっている人は、少ない人に比べて、のぼせの出現がおよそ半分以下という結果が出ました。
 これらの研究について比較分析(メタ分析)を行った、米国ミネソタ大学食品科学・栄養学部のM.S.カーザー教授は、イソフラボンを含む大豆食品は、のぼせ、ほてりの頻度と症状を40~50%減らすことができ、そのためには1日当たり25~50gの大豆たん白または50~70mgの大豆イソフラボンを含むサプリメントを摂取することが効果的と報告しています(注3)。

図1 大豆と小麦を使った実験

図1 大豆と小麦を使った実験

図2 大豆たん白の摂取とのぼせの発生率

図2 大豆たん白の摂取とのぼせの発生率
  • 更年期障害期間後の女性104人を対象

  • 1日60gのたん白(大豆たん白、及びカゼイン)摂取

  • 分離大豆たん白60gの中にはアグリコンとして76mgのイソフラボンが含まれる

  • プラセボ(カゼイン)にはイソフラボンは含まれない

  • 期間:12週間(8週目は摂取中断)

  • Albertazzi et al. Obsterics & Gynecology. 91:6-11,1998

【2】コレステロール、中性脂肪、肥満

コレステロール低減、二重の効果

 女性ホルモンには血中コレステロールの上昇を抑える作用があります。このため女性ホルモンの分泌が激減する更年期になると、女性は急にコレステロール値が上がる傾向があります。とくに善玉のHDL―コレステロールと悪玉のLDL―コレステロールのバランスが崩れると、狭心症、心筋梗塞などのリスクが高まります。このことからも更年期以降の女性は、特に食事に気を配る必要があります。
 コレステロールは、体の中ではおもに肝臓でつくられますが、食事からも補給されます。食事でコレステロールと大豆たん白質をとった場合、コレステロールの吸収や肝臓への運搬に不可欠な胆汁酸は、コレステロールだけでなく大豆たん白質にも結びつきます。そのため、そのぶんコレステロールの吸収量が抑えられて、結果的に血中のLDL―コレステロールが低減します。一方、大豆たん白質と結びついた胆汁酸や、吸収されなかったコレステロールは体外に排出されます。つまり、胆汁酸はもともとコレステロールからつくられるので、大豆たん白質はコレステロールの吸収を抑えるだけでなく、胆汁酸の量を減らすことによって二重のコレステロール低下作用を発揮するのです。
 血中脂質についての臨床試験38件の比較分析(メタ分析)の結果では、食事中の動物性たん白質を大豆たん白質に置き換えると、LDL―コレステロールは12.9%、総コレステロール9.3%、中性脂肪は10.5%低下したことが分かりました(図3)。またこのとき、善玉のHDL―コレステロールの値に変化が見られなかったことから、大豆たん白質はコレステロールの善玉と悪玉のバランスを改善する効果があることも確認されました。

図3 大豆たん白質の血中脂肪値改善効果

図3 大豆たん白質の血中脂肪値改善効果
  • 38件の臨床試験の比較分析総まとめ

  • 対象総数:730人

要注意、内臓脂肪型肥満

 中性脂肪も心臓疾患や動脈硬化に深く関わっています。男性の場合、中性脂肪値は30歳を過ぎたころから急上昇しますが、女性では閉経後にとくに顕著になります(図4)。
 肥満には皮膚の下に(中性)脂肪がたまる「皮下脂肪型肥満」と内臓の周りにたまる「内臓脂肪型肥満」があります。内臓脂肪型肥満の人は、糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常など動脈硬化の危険因子を併せもつことが多く、それらは互いに密接に関連していることから、「メタボリックシンドローム」と総称されています。内臓脂肪は、インスリンの働きを抑えたり、血栓を溶かす機能をさまたげるなどの作用を持つ生理活性物質(アディポサイトカイン)を産生しています。
 日本ではBMI〔体重(kg)÷身長(m)2〕25以上を肥満としています。しかし、BMIが25未満でも、おへその位置の胴回りが女性で90cm以上、男性で85cm以上の場合、また体脂肪率が女性で30%、男性で25%以上の場合は、内臓脂肪型肥満や体重のわりに脂肪が多い隠れ肥満の可能性が高くなります。BMI値と複数の生活習慣病を併せもつ率を調べたところ、女性では21.9、男性では22.2のときが、最も病気が少ないという結果が出ています(図5)。

図4 血清中性脂肪の平均値(性・年代別)

図4 血清中性脂肪の平均値(性・年代別)

図5 男女別BMIと疾病合併率の関連

図5 男女別BMIと疾病合併率の関連

中性脂肪、内臓脂肪を減らすβーコングリシニン

 大豆たん白質の主要成分の一つであるβ―コングリシニンには中性脂肪、内臓脂肪の低減効果があります。β―コングリシニンの、ヒトに対する効果を調べた実験についてご紹介します。実験方法は通常の食事に、1日5gのβ―コングリシニンを摂ってもらい、血中の中性脂肪と内臓脂肪量を調べるというものです。
 その結果、同量のカゼインを摂取したコントロール群(図中では「プラセボ群」)に対し、β―コングリシニンを摂取した群は、図6のように実験開始後4週間で、血中の中性脂肪が有意に減少しました。これについては血中の中性脂肪値がもともと高い人(150mg/dl以上)と適正範囲(150mg/dl未満)の人で比較すると、β―コングリシニンは中性脂肪値が高い人のみに作用することも確認されています。中性脂肪も体にとっては欠かせない成分なので、適正範囲内の人には特に影響をもたらさないということは食品成分として重要な要件です。
 次に内臓脂肪に対する効果を見たところ、表1のように実験開始20週以降でβ―コングリシニン摂取群に有意な減少が確認できました。この場合も内臓脂肪が多い人ほど減少率が高いことがわかっています。

図6 血中中性脂肪の推移

図6 血中中性脂肪の推移

表1 大豆β-コングリシニン投与前後における内蔵脂肪面積の変化

1 大豆β-コングリシニン投与前後における内蔵脂肪面積の変化
  • Journal of Atherosclerosis and Thrombosis, Vol.13(5)247-255, 2006

【3】骨粗しょう症

 エストロゲンは骨からカルシウムが溶け出すのを抑える作用がありますが、閉経によりエストロゲンの分泌が激減すると、カルシウムの流失に歯止めがかからなくなります。これが骨粗しょう症の主な原因です。そして骨粗しょう症が進行して骨がもろくなると、転倒などによる大腿骨頸部骨折から、寝たきりとなるリスクが高くなります。

カルシウム摂取の多い欧米で大腿骨頚部骨折が多い

 大腿骨頚部骨折は、カルシウムの摂取量が欧米の約半分しかないアジアの方がはるかに少なく、日米の比較でも、人口10万人当たりの大腿骨頚部骨折は、アメリカが144.9人なのに対し日本は56.0人です(表2)。その理由の一つとして大豆たん白・イソフラボンの摂取量の違いがあると考えられています。
 閉経期のアメリカ人女性69人に、それぞれ違ったたん白を1日当たり40g、6カ月摂取させて、腰椎の骨密度と骨塩量の変化を調べた研究があります(図7)。その結果、ホエーたん白(乳清たん白)を摂取したグループは骨密度、骨塩量とも、実験開始時に比べ有意に減少していました。一方、イソフラボンを80.4mg含む大豆たん白質では骨塩量は上昇しました。
 更年期後のアメリカ人女性66人を対象にした実験では、イソフラボンを含まないカゼイン摂取グループ(対照)は、骨密度、骨塩量とも明らかな減少を示したのに対し、イソフラボン56mg摂取のグループでは骨密度、骨塩量の減少が顕著に抑えられ、さらにイソフラボン90mg摂取グループでは増加を示しました(図8)。

表2 カルシウム摂取量とたん白源と骨折の関係

表2 カルシウム摂取量とたん白源と骨折の関係

図7 大豆たん白の摂取と閉経期女性の腰痛の骨密度と骨塩量

図7 大豆たん白の摂取と閉経期女性の腰痛の骨密度と骨塩量

 日本では478人の女性を、閉経後5年以内の閉経直後群と、5年以上の閉経後長期経過群に分け、比較した研究があります(図9)。その結果、閉経直後群では大豆イソフラボン摂取量の比較的多いグループは、最も少ないグループより骨密度が有意に高く、閉経後長期経過群でも最も大豆イソフラボンの摂取が多いグループは、最も少ないグループより骨密度が有意に高くなりました。閉経後長期経過群では、全体的に骨密度は低くなっていますが、その中でも、大豆イソフラボン摂取量の多いグループほど、骨密度が高いという傾向が見られます。

図8 大豆たん白の摂取と更年期後の女性の腰椎の骨密度と骨塩量

図8 大豆たん白の摂取と更年期後の女性の腰椎の骨密度と骨塩量

 骨を強くするには何よりもカルシウムをとることが大切です。しかし、せっかく摂ったカルシウムもどんどん体の外に出てしまっては意味がありません。大豆たん白に含まれる大豆イソフラボンは、エストロゲンと同じような働きで、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぎ、骨密度を保ちます。また大豆たん白はさまざまな調理、味つけが可能なので、好みに合ったメニューでおいしく摂ることができます。

図9 閉経後女性のイソフラボン摂取による腰椎の骨密度の変化

図9 閉経後女性のイソフラボン摂取による腰椎の骨密度の変化

(注)

  • 厚生労働省「平成17年簡易生命表」。男性は78.53歳。

  • Bruce Kessel Alternative to Estrogen for Menopausal Women. P.S.E.B.M.1998.Vol.217

  • 2003年7月開催セミナー

  • 松沢佑次「生活習慣病における脂肪細胞の意義と大豆たん白質の効果:体脂肪分布と脂肪細胞機能、とくにアディポサイトカイン分泌に及ぼす大豆たん白質の影響(第一報)大豆たん白研究vol.520021ー8」