8. 大豆たん白質の健康知識 心臓病予防編
<資料1> 日本人の食生活の変化と血管疾患の増加
図1 脂質、動物性たん白質、植物性たん白質の摂取量推移
図2 総コレステロール平均値の推移
日本人を含むアジア人の伝統的な食生活においては、大豆は重要なたん白源でした。ところが厚生労働省が毎年行っている国民健康・栄養調査では、過去およそ50年間で、大豆を含む植物性たん白質の摂取量は、明らかに下降傾向にあります。これに対して、動物性たん白質と脂質の摂取量は増加傾向にあります(図1)。戦後10年目の1955年の時点では、動物性たん白質と脂質の摂取量は"バランスの取れた栄養摂取"からは程遠いものでしたが、高度経済成長が終焉に向かい始めた1975年ごろまでには、動物性たん白質と脂質の摂取量は程よく改善されました。しかし、その後も動物性たん白質と脂質の摂取量は増え続け、1955年時点に比べて現在では動物性たん白質の摂取量は2倍、脂質は3倍となっています。いわゆる食生活の欧米化が急速に進み、日本人も動物性食品の過剰摂取状態にあるといえます。
このような食生活の変化に伴って、日本人の総コレステロール平均値は年代、性別に関係なく上昇しています(図2)。ちなみに2004年(平成16年)に厚生労働省が行った国民健康・栄養調査では、総コレステロール値が高い(220mg/dl以上)成人男性は26.8%、成人女性は35.6%で、境界域(200-219mg/dl)にいる成人男性は20.9%、成人女性は20.5%となっています。つまり成人の2人に1人は血中コレステロールに問題がある、という結果が出ているのです(表1)。
表1 高コレステロール人口比率
日本人男性 | 日本人女性 | |
---|---|---|
総コレステロールが境界域 200-219mg/dl |
20.9% | 20.5% |
総コレステロールが高値 220mg/dl以上 |
26.8% | 35.6% |
境界域と高値の合計 | 47.7% | 56.1% |
厚生労働省 平成12年度第5次循環器疾患基礎調査概況
図3 中性脂肪やコレステロール高値実態と認識(男性)
図4 中性脂肪やコレステロール高値実態と認識(女性)
厚生労働省が行なった平成11年の国民栄養調査結果(図3・図4)でも、コレステロールや中性脂肪が高い人の割合は、男性で最も高い40歳代で59.6%、女性で最も高い50歳代では62.5%となっています。しかしながら自分がそれらの値が高いことを認識している人の割合は、男性40歳代で25.7%、女性50歳代で29.6%しかいません。つまり、実際にコレステロールや中性脂肪が高いにもかかわらず、そのことを自覚していない人が、男女とも半数以上いることになります。コレステロール値が上がると動脈硬化が起こりやすくなり、心臓や脳などの血管疾患の原因となります。実際、日本人の死因を見てみると、45歳以上の男女では、心疾患(心臓病)と脳血管疾患(脳卒中)が2位、3位となっています。コレステロール値と密接な関係があるこれら2つの血管疾患を合わせると、第1位のがんに匹敵します(図5)。わが国も、米国における心臓病対策を「対岸の火事」と見過ごしていられる状態ではなくなってきているのです。大豆たん白質はコレステロールを低下させ、脂質代謝を活発にさせ、エネルギーの代謝にも好ましい影響を及ぼすことが研究によって明らかにされています。日本人も今後さらに、より多くの大豆たん白質を必要とする時代になってきているのです。
図5 日本人の死因