大豆たん白質の健康知識 基本編
大豆たん白質の栄養価は牛乳・卵と同じ最高点
たん白質の評価は、必須アミノ酸の含有量とバランスによります。ヒトに必要な20種類のアミノ酸のうち、体内で合成することができないアミノ酸は9種類あります。ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニールアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンで、これらを必須アミノ酸といい、通常は食品から摂取しなければなりません。栄養価の高いたん白質は、これら9種類の必須アミノ酸をすべてバランスよく含んでいます。
大豆たん白質はこれまで、牛乳や卵のたん白質よりも栄養価が低く見られていました。しかし栄養の評価方法はいろいろあり、最近の栄養評価方法である「たん白質消化吸収率補正アミノ酸スコア」(PDCAAS)で測定してみると、大豆たん白質は牛乳(カゼイン)や卵(卵白)のたん白質と同様、スコア1.00の最高点であることがわかりました(図1)。
図1 各種食品たん白質のたん白質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS)
そもそもたん白質の栄養評価は、1919年から長い間、PERという方法で行なわれてきました。この方法では、一般的には成長期ラットの試験結果を参考にしてアミノ酸の必要量を出しています。これが結果的に動物性たん白質を過大評価し、大豆たん白質を過小評価することになりました。なぜならラットは体毛の増加のために、ヒトよりはるかに多くのメチオニンを必要とします。大豆たん白質は動物性たん白質よりメチオニンの含有量が少ないために、栄養価が低く評価されていたのです。
1985年、FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)とUNU(国連大学)は、人間に必要なアミノ酸の量、すなわちアミノ酸評価パターンを4つの年齢グループ別に発表しました。その結果、これに基づいた大豆たん白質のアミノ酸スコア(AAS)は、図2に示したように2歳以上のすべての年齢層で100と評価され、栄養的に優れたたん白質であることが確認されました。
図2 必須アミノ酸必要量と大豆たん白のアミノ酸含有量
その後も評価方法に改善が加えられ、1990年には消化吸収性を加味したPDCAASが、新しいたん白質栄養評価方法として推奨されました。先に述べたように、この栄養評価方法でも大豆たん白質は、牛乳や卵と同じ最高点を獲得しています。そして1993年、FDA(米国食品医薬品局)はこのPDCAASを新しいたん白質評価方法として導入しました。
PDCAAS=Protein Digestibility Corrected Amino Acid Score
PER=Protein Efficiency Ratio
FAO=Food and Agriculture Organization of the United Nations
WHO=World Health Organization
UNU=United Nations University
AAS=Amino Acid Score