豆腐百珍からみる江戸時代の大豆の食文化
豆腐料理のみ100品とその作り方を掲載した「豆腐百珍(とうふひゃくちん)」という本が発刊(1782年)されます。身近で淡白な豆腐という一つの素材で百通りの料理を紹介するという遊びの精神がうけて大好評、翌年には「豆腐百珍続編」が発刊されて、さらに後に「豆腐百珍余録」まで出版されています。この本は、実際の料理人が記したものでなく、文人が趣味で書いたもののようで、食する立場の品評まで添えられているなど、これらもベストセラーになった理由かと思われます。調理分類としては、煮物が55品、焼き物が20品、揚げ物が16品で多く、調味分類では醤油を使った料理が44品、味噌を使った料理が18品で、この頃、醤油を使って煮物をする食文化が完成されていたことがうかがえます。また味噌を使った「田楽」も多く扱われています。こちらは全国各地で伝統的な田楽の名物料理があったことが理由のようです。
「豆腐百珍」の中で紹介されている「草の八杯豆腐」は、出汁6、醤油1、酒1の八杯汁でつくるおろしぶっかけ太うどんのようなメニューですが、当時の惣菜の中では人気料理で、江戸後期に発表された料理番付で常時最高位をとっています。「豆腐百珍」の中で大トリの百番目に紹介されているのは「真のうどん豆腐」、薬味におろし大根、唐辛子粉。葱、陳皮、浅草海苔をあげていますが、割り胡椒一品でもと紹介されています。胡椒が香辛料として普及しはじめていることも伺える興味深い記述となっています。
【材料】 |
もめん豆腐、八杯汁(出汁6・醤油1・酒1)、葛、大根おろし |
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【作り方】 |
①豆腐を太いうどん状に切り、八杯汁で煮立て、葛を入れてとろみをつける。 |