平安時代の医学書で紹介されていた大豆
平安時代に入ると医学書にも大豆の記述が多くみられます。日本の最古の医学書「医心方(いしんぼう)」には大豆と大豆の加工品が326回も登場し、大豆と小豆の食べ合わせ、大豆粉と豚や猪の食べ合わせなどタブーも紹介されています。「医心方」は平安時代の宮中医官であった丹波康頼(たんばのやすより)が中国・宋以前の医書・哲学・文学など200以上の文献をまとめた医学全書で現在では国宝にも指定されており、原本は東京国立博物館が所蔵し、近年になって現代語訳版も出版されています。
「医心方」の中で大豆は五穀24種の中で健康に役立つものとして上位にあげられています。大豆を生のまま使う用法もありますが、大豆の煮汁を使ったもの、大豆を粉にして飲むもの、粉を練って患部に貼るもの、大豆もやしを粉末にしたものなど、効果を期待できるものとして多様な利用方法が記述されています。薬用としては主に黒大豆が指定されており、大豆の豆がらを使って口臭を消すなど、平安時代にして生活にかなり密着していた様子がうかがえます。
また、呪術に大豆を使ったという記載が20以上あり、今でも行われている節分の豆まきといった習俗のルーツをみることができます。