大豆のルーツ
これまで大豆のルーツは、シベリア、中国、朝鮮半島、東南アジアといろんな説が唱えられていました。しかし今では新たな遺跡発掘や遺伝子調査などから、それぞれの地域で固有の特長があるものがみつかっており、起源地は一つでなく複数あるのではないかと考えられています。
その大豆の原種といわれているのはつる性の植物・ツルマメ(ノマメとも呼称)。この植物は今でも北海道日高地方を北限にして日本各地で見ることができます。野生のツルマメは茎が細くて長く、実は大豆と比べると偏円形でかなり小さいものでした。それが、作物として育て上げられる長い歴史の中で、実が大きくなり、茎はつる状になる性質から直立する性質に変わって、背丈も低くなったとされています。また実の入っているサヤも、熟すると自然にはぜるという本来のマメ科植物の性質を失うようになりました。
大豆とツルマメの中間体も上記のエリアでみつかっていますので、大豆は今のように世界各地にある作物でなく、古くは中国、東アジアを中心に栽培されながら進化をしたマメであるといえます。古い文献の中で大豆の栽培について具体的に書かれているのは、中国最古の農書「氾勝之書(はんしょうししょ)」(紀元前1世紀後半)。これは現在の山西省あたりの農業について記述した本ですが、その中に「大豆は不作の年でもたやすく収穫が得られる。それで飢饉に備えるための貯え物として大豆を作ることは古代人にとってごく当然のことであった……」と記されています。