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大豆たん白質の健康知識 女性の健康編

更年期障害と大豆たん白質

のぼせ、ほてりの軽減効果

更年期障害の症状は大きく3つに分かれます。

自律神経失調症状・・・血管運動神経症状(のぼせ、顔面紅潮、冷え、発汗など)、睡眠障害、その他(動悸、めまい、頭痛、耳鳴りなど)
精神症状・・・抑うつ、不安感、意欲低下、精神不安定、記憶力減退など
その他・・・運動器官障害(肩こり、関節痛、腰痛、筋肉痛など)、消化器症状(腹痛、食欲不振、悪心、吐き気、下痢など)、その他(疲れやすい、皮膚が痒い、口が渇くなど)

 欧米では以前から更年期障害の研究に力が入れられてきました。その結果、動悸、めまい、頭痛といった不定愁訴は、女性ホルモンの不足によりもたらされることが明らかとなりました。そして不足しているエストロゲンを人為的に補うという考えのもとで「女性ホルモン補充療法(HRT)」が生み出されたのです。
 しかし、HRTによって乳がんや子宮体がんの発症率が高くなる危険性が指摘されたこともあり、アメリカの更年期女性の80~85%はHRTを受けたくないと考えていることがわかっています。

図1
大豆と小麦を使った実験

 このような背景から、欧米ではHRTに代わる療法の研究が盛んに行われています。特に植物由来の成分に関心が高まっていますが、その中でも欧米の研究者たちが注目したのが、大豆たん白及び大豆イソフラボンです。大豆に含まれるイソフラボン類にはゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインがありますが、このイソフラボンはエストロゲンとよく似た働きをすることがわかってきたため、大豆たん白の摂取がHRTに代わる療法として期待されるようになったのです。

 様々な実験の中でも特に目を引くのは、1995年にA.L.Murkies(マーキーズ)らが大豆と小麦を使って行った実験です(図1)。これは週に14回以上のぼせ症状がある58人の閉経後女性(平均年齢54歳、年齢幅30~70歳)を無作為に2グループに分け、それぞれに大豆と小麦の粉末45g(大豆粉はイソフラボンを豊富に含む)を12週間投与し(被験者には大豆粉末、小麦粉のどちらを投与しているかは告知しない)、その効果を見たものです。
 大豆粉末を毎日摂取したグループ(28人)と、小麦粉を摂取したグループ(30人)を比較すると、どちらものぼせは減少しましたが(試験開始時に比べて大豆粉末を摂取したグループは40%減、小麦粉を摂取したグループは25%減)、大豆粉末グループでは小麦粉グループと比べて早くから有意な効果が見られました。
 また、Albertazzi(アルバタッチ)らは1998年に、大豆たん白とのぼせ症状についての実験を行なっています(図2)。
 閉経後の女性104人を無作為に2グループに分け、51人(年齢幅48~61歳)に毎日60グラムの大豆たん白(76mgのイソフラボンを含む)を、他の53人(45~62歳)には毎日60グラムのプラセボ(カゼイン)を投与して、12週間後に分析を行なったところ、大豆たん白はカゼインに比べ、のぼせ(夜間の発汗も含む)の回数減少に、はるかに効果があることがわかったのです。

図2
大豆たん白の摂取とのぼせの発生率

 一般的に更年期の時期は、閉経を中心にその前後10年間くらいを指します。日本人女性の閉経平均年齢は、51歳前後といわれており、ある女性が51歳で閉経を迎えた場合、その前後10年、つまり46歳から56歳までが更年期の時期に当てはまります(『更年期なんて怖くない』東京医科歯科大学助教授小山嵩夫著)。2005年10月に行われた国勢調査によると、日本人の成人女性の人口は5,367万人です。そのうち、いわゆる更年期に相当する年齢を45歳から54歳と考えると、成人女性全体の約15.4%、827万人がこれに該当します。さらに、予備軍とされる40歳から44歳を含めて考えると、全体の約22.9%を占めていることになります(図3)。女性にとって更年期は避けて通れないもの。少しでも更年期の症状を軽減し、健やかに高齢期に移行できるようにと、日本でも大豆と更年期に関する研究が行われています。

図3
日本人の成人女性年齢別人口

 岐阜大学の永田知里博士(公衆衛生学)らは、1992年から岐阜県高山市で、同市に在住の35~54歳の更年期前の女性1106人を対象に調査を始めました。調査開始時に食生活を調べ、大豆製品や大豆イソフラボンをどのくらい摂取しているかをチェックしておきました。そして6年後の1998年まで、のぼせ・ほてりの症状を再度調査しました。この期間中に101人の女性が軽度、および重度ののぼせ・ほてりの症状を訴えています。年齢、総エネルギー摂取、更年期症状などのデータと大豆の摂取量を対照させてみると、大豆製品をたくさんとっている人は、少ない人と比べると、のぼせの出現が約半分程度という結果が出ました。このことから大豆製品には、更年期に起きるのぼせやほてりを予防する効果のあることが示唆されたのです。

 また、取手協同病院の染川可明産婦人科主任科長は、2001年に米国産婦人科学会誌に『食事から摂る大豆イソフラボンは、閉経後の日本人女性の更年期症状や骨密度に、どのような影響を与えているか』という論文を発表しています。これは閉経後の日本人女性を対象にして、更年期症状や骨粗しょう症と大豆イソフラボンの関係について調査したものです(実験方法については「骨粗しょう症と大豆たん白質」の染川論文参照)。
 それによると、更年期症状のひとつであるほてりに関しては、大豆イソフラボンの摂取量の差によって有意差は出なかったものの、動悸や腰痛の軽減という面では、明らかに大豆イソフラボンの摂取量が多いグループのほうに軍配が上がった、と報告されています(図4)。

 大豆たん白質、及び大豆イソフラボンと更年期女性の健康については、上記以外にも現在もさまざまな研究が進められています。

図4
更年期症状スコア

グループA:イソフラボン摂取量35mg/日以下
グループB:イソフラボン摂取量35-50mg/日
グループC:イソフラボン摂取量50-65mg/日
グループD:イソフラボン摂取量65mg/日以上
閉経直後群:閉経後5年以下、n=269
閉経後長期経過群:閉経後5年以上、n=209
左の図は閉経直後群、右の図は閉経後長期経過群の結果。
※P<.05(一元配置分散分析による)。
閉経直後群では、動悸と背痛において有意差があった。
Somekawa et al. Obstetrics&Gynecology Vol.97, No.1, Jan 2001, pp109-115